第6話 可愛いは正義異論は認めない。(橘さん可愛いの回)
あれからどこか頬が朱色に染まっている橘さん。体調が悪いのでしょうかね?
そんな橘と共に黒塗りの高級車に揺られること数十分。何十分車に乗っていたのかわからないくらいほど濃密な時間を朝から過ごした天音海翔。
すなわち俺は、学校に来て早々、死にそうになっていた。なんでかって?
分かる人もいると思うけど一応ね。
今から遡ること数分前、
■
当然のように俺と橘は学校の前で黒塗りの高級車を降りた。
もちろんのことながら、俺は離れたところに降ろしてくれないかな~と橘に淡い希望を胸に抱きながらお願いしたのだが、当然のように却下された。なんでだよ!!
ならばと思い、降りた瞬間ダッシュして逃げるという理性の欠片もない脳筋プレイをしようとしたのだが、脳筋の中の脳筋であるスキンヘッドの黒サングラスマッチョ。またの名を極道龍さんに通せんぼされた。
して、俺は誠に遺憾なことながらも一緒に学校に行くことになったのだ。
一応補足というか説明していなかったのだが、俺と橘は同じクラスなのである。
クソがッッ!
黒塗りの高級車から降りて早々、俺たち。いや橘に注がれる多数の視線。
その多くは男どもからである。一緒にいる俺ですらとても不快な気分になる。
こんな視線を毎日注がれていたらそりゃぁ、男避けが欲しくなるよなといった具合である。
しかし俺は思う。
これって逆効果じゃね???
理由はいたってシンプル。至極当然の事である。
Q.橘抹白の容姿は?
A.めちゃくちゃ可愛いです。美少女でしかない。
Q.橘抹白の学校での立場は?
A.『高嶺のお嬢様』と称されています。
Q.それじゃあ、そこにしらない男が横に居たら?それも同じ車から降りてきたら?
A.嫉妬に狂って殺したくなっちゃう…
というわけであるのだよ。
つまり俺は男どもの嫉妬に狂った、殺意の籠った視線を絶賛大量に浴びている。
女子たちもこそこそ話をしているようだった。
『あれって二年の天音海翔くんだよね!?』
『あの遠目からでもわかるイケメン!悲しいことに天音海翔くんで間違いないよ…』
『橘抹白さんの横にいるのってあのめっちゃイケメンで有名な天音海翔じゃん!?』
『天 音 海 翔 様!!かっこいいですわ!こっちをむいてぇぇぇ!』
『ちょっと静かにしなさいよ!私達、「非公式天音海翔ファンクラブ」の存在が明るみになってしまうじゃない!』
『もしばれたら会長になにされるか…考えるだけでも恐ろしいわ…』
なんかみんな騒いでる。いつも騒がしいけど今日はより一層騒がしいなぁ(遠い目)
けどこういうときはたいていうるさいところに顔を向ければ静かになるんだよな。
ちら、ちらちらっ。
『『『『『きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』』』』
うるさいんだよなぁ…
ちら、ちらちらっ。
『『『『『きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』』』』
・・・・・・・・
ふぅ…やっと静かになった。
けどそんな悲鳴を上げるほどの俺って滑稽かね?みんな地面に倒れこんじゃってるし。お前も大変だなぁという意味を込めて橘をみやる。
なぜか橘の顔がむくれていた。
なにそれ可愛い。
けどもWHYなのであるのだよ。
なんでむくれちゃってるのさっ!
俺はフグみたいに頬を膨らませている橘の頬をつついてみることにっ!
ぷに、ぷに。ツン、ツン。
なにこれ超やわらけぇ…
ぷに、ぷに。ツン、ツン。ぷに、ぷに。ツン、ツン。ぷに、ぷに。ツン、ツン。————。
「ちょっとやめなさいよ!!!」
橘に怒られた。当然である。けども橘さんやぁ。男にはやらねばいけない時があるのだ!
ぷに、ぷに。ツン、ツン。ぷに、ぷに。ツン、ツン。————
「なにしれっとつづけてるのよぉぉぉぉぉ!」
橘が叫んだ!お前って大きな声出せるのな!
けどもそろそろやばいな。これ以上調子に乗ったらまずい気がする。
素直に
「ありがとう橘、頬っぺた柔らかかったよ。やっぱお前可愛いn———」
「~~~~~~!!!」
学校中に響き渡る快音。さながら甲子園での確定ホームランの時のような静けさが辺りを包んだ。気づくと俺の頬からジンジンと鈍い痛みが。
そこで気づいた。
俺は頬っぺたを強打されていたのだ。
圧倒的デジャブ!デジャブすぎる!それ数十分前にもやったから!
俺の意識はそこで落ち……なかった!
そんな
なんとか意識が飛びそうになったのをこらえ、弁明を開始することにした。
「いや、違うんだ橘。これには深いわけがあるんだよ。」
「何かしら下僕?」
そういやそんな設定だったな!!忘れてたよ!!
「下僕って…俺ってお前の彼氏だろ?違うか?」
「な…偽…私たちは偽のカップルよ。そんな急に彼氏面やめてくれるかしら?不愉快だわ」
「そんなこというなよ抹白。俺はお前の偽のでも彼氏になれて本当は嬉しいんだぜ?」
「え…そうなの?」
「当り前だろ?だってお前、こんなかわいいやつの彼氏だぞ?全男が喜ぶわ!」
「顔だけ…なの…?」
「そんなわけないだろう?俺がそんな下種に見えるか?」
「見えるわ」
「即答かよ!まぁいいよ。お前ってちょっと、いやかなり辛辣だよな」
「いきなり貶すとはいい度胸じゃない?」
「けど、俺にとってはそういう距離感の方が接しやすいんだよ」
「あら、ドMさんだったのかしら?」
「なわけないだろう…どっちかっというとSだろ。」
「そんな事どうでもいいのよ。ほんとどうでもいい…」
「けどこういう会話が俺にとっては楽しいんだよ。俺にはこんな気楽に話せる女友達は実はお前くらいだったりするんだぜ?」
「え…?」
「そんな驚いた顔すんなよ…別に女友達が居ないってわけじゃないんだ。だけどみんななんか余所余所しいんだよなぁ…」
「あぁ…」
「どうしてそう納得した感を出しているんだ?知っているなら教えてほしいんだが?」
「いやね。私が殺されてしまうわ。」
「お前が殺されるって!?いったいどんだけやべぇやつなんだよ…」
「だからあなたに私が近づいたことに感謝することね。」
「そうだな…近づきたくて近づいたわけじゃないが結果良ければすべて良しってことだ」
「そうね…」
俺たちはなぜかしみじみとした雰囲気になっていた。
雰囲気をぶち壊すところ申し訳ないんだが…
なんかめっちゃ視線感じるんだが???
「おい橘、なんか、めっちゃ視線感じないか?」
「っ!へ~、い、いったいなんのことかしら〜?」
「なんだよ歯切れが悪いな。けどまぁ気にしても無駄だよな。お前といる以上は。」
「そ、そうね~。あ、私用事思い出しちゃった、さ、先に教室に戻ってるわね~!」
「お、おい!」
橘はなぜかトコトコと走って行ってしまった。
そんなに走ったらこけそうだなぁなんて思いつつ。
けどもやっぱりこけなかった。
すると突然背後から俺を呼ぶ可愛らしい声が聞こえてきた。
「
俺を呼ぶその人物は、亜麻色の髪色をしたボブのユルフワ系美少女。
彼女を知らない人物はこの学校にいない。その名も、学園の天使。またの名を、癒しの風を纏いし美少女。また、小悪魔系天使。そう呼ぶ人もいる。
彼女の名は
俺の気になっている人物である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます