どんだけーーーー

 コンビニの駐車場に車を止め、ボーっとしながらタバコを吸っていた。


 1台の軽自動車が、わたしの隣に近づいてきた。どうやら駐車するらしい。

 運転席には…一瞬無人運転かと思った。でも運転手はいた。小柄な婆ちゃん。ハンドルに胸をピッタリくっつけ、フロントガラスに顔を異常に接近させてた。こういう体勢でよく運転できるもんだ。


 あいにく駐車場はわたしの隣しか空いていない。婆ちゃんの車が、わたしの車に近付いてくる。接触しやしないかと、ドアミラーで確認する。

 婆ちゃんは口を大きく開け、ハンドル操作をしていた。そして何とか、わたしの車に接触することなく、フロントを頭に、駐車スペースに納まった。


 しかし、その後の展開がすごかった。駐車を終え、買い物に行くかと思いきや、車をバックさせ、再び駐車作業に入った。…どうやら婆ちゃんはコンビニ側をリアにして駐車したいらしく、何度もバック、ハンドル旋回、前進を繰り返していた。


 …45分後。婆ちゃんの車は、駐車スペースに綺麗に収まった。

 そのとき、駐車場には婆ちゃんとわたしの車しか残っていなかった。つまり、どこからでも簡単に駐車できる状態であったのである。この間、わたしは5本のタバコを灰にしていた。


 婆ちゃんの車のエンジンが停止した。運転席から、小さな婆ちゃんがでてきた。汗だく、肩で息をしていた。一旦コンビニの入り口に行ったと思いきや、また戻ってきた。開錠し、助手席から買い物バックを取り出した。再び施錠し、自分の駐車状態を十分に確認してから、入店した。


ー 何買うんだろう?わたしは興味を持ち、婆ちゃんに続き入店した。


 婆ちゃんは迷わずおにぎりを1個選び、会計の列に並んだ。

「手巻きおにぎりツナマヨ1個、税込み135円です」


 店員から値段を示され、婆ちゃんは財布を取りだした。

「百円玉1つと…30円…あ、20円しかない、5円玉2個使っても良いですか。これで130円…あと5円…えっと1円玉が1個、2個…はい5個。これで良いですか」


「135円ちょうどのお預かりです、こちらレシートになります。ありがとうございました」


 婆ちゃんは買ったおにぎり1つをゆっくりと買い物バックに入れ、軽自動車に向かっていった。


 わたしは叫んだ。心の中で。

「あーーーーーーーっ、あんた、もっと時間を大切に使いなさいよ!」

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