タオル

 自信はある。今日の試合は必ず勝てる。そのためにこれまで、試合相手の分析に加え、ストイックな練習や減量を続けてきたのだ。


 リングに上がる。観客席から大きな拍手と声援。勝てる。そう確信した。


「カーン」


 試合開始を告げるゴングが鳴った。ファイティングポーズを取りながら、相手に向かっていった。その時、僕の後ろから、1枚のタオルがリングに投入された。


 レフェリーが間に入り、試合の終了を告げる。僕は負けたのだ。

 一体何が起こったのか、まったく分からなかった。観客席から悲鳴と怒号。


 …そういうことか。僕はようやく事態を理解した。


 僕が履いていたボクサーパンツが、僕の両足首まで垂れ下がっていた。

  …かも知れない…


《トリック解説《かいせつ》》

 ↓

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 ↓

 試合開始とともに相手に向かった際、「僕」のパンツが勝手に脱げて足首までずり下がり、局部が露わになった。試合続行は不可能と考え、セコンドがリングにタオルを投げた。

 減量はしたけど、ボクサーパンツをジャストフィットサイズにしなかったからだ。

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