第22話  クロードの悩み

なんで、俺が欲しいものは2度も王子に取られるんだろうなぁ。オレはクロード、宰相の息子だ。多分、次の宰相は俺だと思う。


ルバートとは幼なじみだ。ルバートは少し優柔不断で、優しい性格をしている。冷たい俺とは正反対だ。


もう1人の幼なじみのカトリーヌは、たまに不思議な事を言うが、とても良い子で可愛らしい。13歳になれば婚約者を決めるから、希望があえば言えと言われたので、カトリーヌが良いと父に伝えてあった。


だが、俺の希望が叶う事はなかった。


12歳の時、カトリーヌはルバートと婚約した。カトリーヌの父親が持ってきた縁談だそうだ。


俺は父と大喧嘩をした。もっと早く言えば、カトリーヌを取られる事はなかったのに。相手がルバートでは奪う事も出来ない。


相手がルバートなら仕方ない。そう思っていたのにルバートはカトリーヌを大事にしなかった。だったら俺にくれと何度も思った。


たまらずルバートに抗議したが、ルバートが改める事はなかった。


「ルバート、お前に婚約の話が来ている。だが、断ろうと思っている」


ずっと確執のあった父に久しぶりに呼び出されて言われた。相手はカトリーヌの妹だそうだ。つらいだろうから、断ろうかと聞く父は俺を気遣ってくれていた。


「大丈夫ですよ。お受けしてください」


そろそろ俺も前に進まないと。そう思って婚約したのだが、なんなんだあのキャシーって子は。やたら馴れ馴れしいし、俺のことを全て知ってるみたいな態度が気持ち悪い。クッキーって何だよ。気味悪くてメイドにあげてみたら、次に来た時にはキャシーの信奉者になっていた。え? あのクッキーやばくないか?


しかも、なんでキャシーとルバートがいちゃついてるわけ……?!


イライラして、キャシーの色仕掛けも冷たくあしらっていたら、すぐにルバートとキャシーが婚約する事になった。父はかなり怒っていたが、落ち込んだフリをしたら、結婚や婚約は俺のタイミングで良いと言って貰えたから、ラッキーだった。


俺は早速カトリーヌに婚約を申し込んだが、あっさり振られてしまった。嫌われてる訳ではなさそうだけど……つい憎まれ口しか言えなかったからいけなかったのかもしれない。


それから何度誘ってもカトリーヌは婚約してくれず、カトリーヌはヨハン王子に取られてしまった。


悔しかったけど、カトリーヌと婚約してなくて良かったと思う。婚約してたら、きっと俺は消されてる。だいたいずっとカトリーヌの執事をしてたなんて、ヨハン王子の執着ヤバすぎでしょ。無理無理、人間諦めが肝心だよね。


まぁ、初恋は叶わないって言うし、カトリーヌも幸せそうだから良いや。カトリーヌは俺の前でも、ルバートの前でも見せなかった幸せそうな顔してるし。ヨハン王子なら絶対幸せにしてくれるでしょ。良かったね、カトリーヌ。


ルバートは、今はキャシーと塔に幽閉されている。キャシーはずいぶん元気がなかったみたいで、俺にも気がつかなかった。あえて話しかけもしなかったけど、だいぶやつれてた。


「ルバート、ごめんね」


塔への幽閉は止められなかった。まったく仕事をしなかった公爵家当主は必要ない。それが元王家なら尚更だ。表向きは公爵家当主のルバートは、病に倒れた事にするそうだ。病だから仕事が出来なかった事にするんだって。相変わらず保身だよね。ルバートの監督をしなかった自分達のせいもあるだろうに。


キャシーと別れてくれれば、公爵家と縁が切れるから罪状と違うし、逃す事もできた。でも、ルバートは望まなかった。分かってたけど、友人を幽閉するってくるなあ。


だけど、これからはこんな事させない。そもそも、ルバートをテキトーに扱ってた王家がおかしいんだよね。切り捨てるのもやたら早いしさ。ルバートの結婚式に誰も出なかったんだよ?! ありえないよね! だからあんなに人少なかったんでしょうに。……まぁ、帝国が怖かったんだろうと思うけど。


ルバートが丸投げしたせいで、カトリーヌの国外追放の件を聞かれたけど、国外追放したのはルバートだし分からないって答えた。だから、国王達はカトリーヌの結婚が分かってビクビクしてる。


「クロード、いつでも良いとは言ったが結婚する気はあるのか?」


「そうだねぇ、もう少し矯正したら、考えようかな」


父とはすっかり仲良くなった。今は戦友のような関係だ。無能な王家を、2人でなんとかしようと奮闘している。


国王陛下と皇太子殿下は自分達の事しか考えないから、帝国の怒りを買わないかばかり考えている。ヨハン王子はカトリーヌを溺愛してると言えば、怯えていたからなぁ。俺は知らないけど、王家はカトリーヌに色々無茶言ったんじゃないの?


ヨハン王子と月1で会う俺は毎回色々聞かれるから、恐怖も利用してもう少しマトモになってもらうように誘導している。父も巻き込み、場合によっては帝国から圧力をかけてもらう。


まずは、王家の思いつきで罪状を決める事を改めよう。法を整備して、他国を見習い、必ず裁判を行うようにしよう。


各国を周りいろんな裁判を見学した。そろそろ国に戻ろうとした時に見た裁判で、気の強い裁判官の女性と出会った。

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