第20話 公爵家の末路
ふふ、ここが愛の果てにの世界なのよね! 無事、養女になれたし、これから楽しむわよ!
私には前世の記憶がある。ここは、以前やっていた乙女ゲームの世界だ。さっき、王子のルバートと会った。すっかり私に見惚れていたわ。さすが攻略難度が低いチュートリアルキャラと言われるだけあるわね。セバスチャンも見つけたわ。でも今はまだダメね。カトリーヌにべったりだもの。
カトリーヌが、早く自殺騒ぎを起こしてくれないとストーリーが進まないから、どんどんルバートと仲良くしなくっちゃ!
ああもう! おかしいわね! なかなかカトリーヌが虐めてこないわ! 仕方ないから、領民に悪口を吹き込んでカトリーヌの悪評を流す。お母様やわたくしのドレスは、全部カトリーヌが買ってることにしてあるわ。領民に優しくして、医療費が高いと泣いてみる。カトリーヌが、私みたいに前世の記憶があるか確かめるために健康保険の話をしたのに馬鹿みたいに税を上げるしかないとか言って領民から嫌われてたからウケるわ。保険料なんて発想この世界にはないから、カトリーヌは記憶持ちじゃないみたいね。ならさっさと虐めてきてほしいわ。
いつまでたってもカトリーヌが騒ぎを起こさないから、ルバートを籠絡して婚約破棄を言い出させる事にした。お父様は、好感度が上がるクッキーでわたくしの言う事を聞いてくれるから簡単だったわ。
ルバートの贈り物はいつもネックレスだから、好感度もバッチリね!
クロードはクッキーを食べてるのかしら? 全然デレてこないから、嫌になってくる。やっぱり腹黒キャラならセバスチャンの方が上よね! しかも優秀な帝国の王子だし!
ルシアンがやっとクッキーを食べてくれたわ! これでローザを襲えばオッケーね。調べてみても、ローザを慕う後輩は居ないの。仕方がないから私がローザに近づいたわ。カトリーヌの妹って事で警戒せすクッキー食べてくれたから、すっかり私の言うなりなの。念のため、今日は手持ちのクッキーを全部食べさせたわ。男もクッキーを与えたら言いなりだから、クッキーって便利よね。でも、これで手持ちが無くなったから、早くお母様と作らないと。
クッキー、まだあったわ! 私ったら全部使ったと思ってた。いつもの袋に入ってるし、試しにスチュアートに食べさせたらお説教ばかりのスチュアートが、宿題はやらなくて良いなんて言ったのよ! 効果は間違いない、良かったわ! でも、これからは大事に使わないと。使用人にあげるのは、もうやめましょう。
ついに、きたわ! 隠しキャラのヨハン王子! メアリーはしっかりクッキー食べさせてくれたみたいで、最初から好感度が高かった! クッキーもすぐ食べてくれたし、最高ね! これなら最高難度の隠しキャラのトゥルーエンドにいけるわ!
……そしてついに卒業パーティー! まさかローザが生きてるパターンなんて……ラブエンドなのにどうしてよ! ルシアンは居なくなってしまうわね。まぁ、私はそこまでルシアン推しじゃないし、いいわ。監禁エンドかと思って焦ったけど、カトリーヌは国外追放されたし、セバスチャンがきっちり始末して戻って来るそうだから問題ないわね。明日は結婚式だし、お相手は王子だから盛大な式になるし楽しみ! セバスチャンは居ないけど、私の花嫁姿を見るのが辛いって言ってたから、仕方ないわ。帰ってきたら、いっぱい愛し合いましょ。
……おかしいわ、結婚式にどうしてこんなに人が居ないの? 王子の式なのよ?!
「昨日のカトリーヌの国外追放が効いてるね。下手に君たちに関わったら自分達も危ないと皆出席を控えたみたいだね」
クロード……そんな事あるの?! もう少しみんなに祝福されたかったわ。でも、セバスチャンが帰ってくればまたなんとかしてくれるわ。
さぁ、今日は初夜だから思いっきり着飾らないと。あら? なんだかメイドも少ないわ。媚を売るけど、腕のないメイドしか居ない。なんでよ! どうせならカトリーヌについてたメアリーを呼んでよね!
そう騒いだんだけど、メアリーは辞めてしまったらしい。
もう、なんでよ! あの子のヘアメイクは、最高なのに!
まぁいいわ。他のメイドでも、そこそこ可愛くはなるし、お相手はルバートだしね。
「……キャシー……かわいいね……私とキャシーは、結婚したんだよね」
「ええ、これからもよろしくね! ルバート! みんなとも仲良くしましょうね」
「……また、みんなか。キャシーは本当はヨハン王子と結婚したかったの?」
あれ? ルバートの目つきがおかしいわ。これってルバートの監禁エンドのスチルにそっくり! や、やばい!
「そんな事ないわ! ルバートがいちばん好きよ!」
「……って事は2番もいるよね……それはヨハン王子かい? クロードかい? ルシアンかい?」
「わたくしはルバートの妻よ! ルバートだけを愛してるわ!」
どうしよう、どうして! 好感度は最高だった筈なのに!
「……本当かい?」
「ええ! もちろんよ!」
そう言えば、昨日ルバートがクッキーを食べさせてくれた。まさか……まさか……あれもプレゼント扱い?!
「なら、生涯私とだけ接してくれ。この部屋から、死ぬまで出ないで……」
淀んだ目をしたルバートに監禁され、私はずっとここにいる。
…………
私は何をしていたんだ? 気がついたら、牢の中だった。私は公爵家の当主を騙った大罪人だそうだ。妻が死に、愛人を公爵家に迎え入れた。カトリーヌは王子と婚約が決まったから、公爵家を私が継げるチャンスも出てきたからな。
キャシーは、天真爛漫で可愛い。カトリーヌとは大違いだ。あの子は仕事は出来るから公爵家の仕事は全部させてある。どうせ継ぐのはあの子だしな。だが、私の方が当主に相応しいと思ってしまう事もある。そんな時、キャシーの母が甘いものが落ち着くとクッキーをくれた。キャシーも、クッキーを作ってくれた。なんて優しいんだ。私の家族はこの2人だ。カトリーヌは、仕事だけさせればいい。
夜会なども遠慮していたが行きたいと言うし連れて行こう。……私が当主なんだから……
そこからの記憶はない。どうやら私は娼婦の呪いを受けていたらしい。だが、情状酌量はないそうだ。何度も訴えたが、そもそも婿なのに愛人を作り、妻が死んだ途端迎え入れた時点で問題があると言われて返す言葉もない。クッキーを食べたのは2人が公爵家に来てからだと、しっかり使用人達からの証言が取れたそうだ。
今は判決を待つ身だ。最悪死刑、良くても犯罪奴隷だと言われている。カトリーヌは、国外追放されボロボロのドレスだけが残されていたそうだ。
キャシーは、おそらくルバート王子が監禁していると、宰相の御子息が教えてくれた。
私の身内は、もう誰もいない……。どこで間違ったのか、もう分からない。
「そもそも、愛人を作らなきゃ良かったでしょ?」
……そうだ、何故私は愛人など作ったんだ。公爵家に婿入りし、妻も私を立ててくれていた。急にモテて、調子に乗ってしまったんだ。
だが後悔しても、もう遅い。
私は冷たい牢の中で、娘達が生きている事を願った。
…………
「証拠、出たから」
嘘よ。今まで何ともなかったのに、どうして! また娼館なんて嫌よ! 贅沢な暮らしを続けたいわ! キャシーが王子を捕まえたし、安泰だと思ってたのに! わざわざキャシーの為に苦労して惚れ薬を作ったりもしたのよ!
「その惚れ薬が、問題だったんだよね。アンタの娘、やっちゃダメな事をしすぎたよ。ローザを襲った黒幕がキャシーだって事がバレたからね。ルシアンはかなり怒ってて、全員地獄に落ちろってさ。あのルシアンが怒るってよっぽどだからね。公爵にも、大量に薬を与えてたよね? あんな量与えたら危険だよ。キャシーに黙って入れたでしょ。それも調査済みだから。子どもは大人の影響を受けるんだよ? アンタがクッキーに密かに混ぜたモノのせいで、アンタの娘はなんでも思い通りにいくと思っちゃった。そうじゃなければ、現実を見れたかもしれないのに」
そんな、そんな……。キャシーの味方を増やしたかっただけなのに!
「さ、頑張って借金を返してね。返し終わる頃にルシアンの怒りが収まってれば、未来はあるよ」
……ここ、娼婦仲間でも絶対行きたくないって言われてるところじゃない。通称、監獄。生きて出られないって……。
「頑張って。ルシアンとか、帝国王子の怒りを買うから彼女は絶対出さないでね」
綺麗な顔の男が、絶望的な言葉を残して去って行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます