第16話

「カトリーヌ、卒業パーティーには出ろ。何が起きてもオレが守るから」


「やっぱり私死んじゃうの?」


「死なせない。カトリーヌは絶対大丈夫だ。だから、これからオレが説明する事を信じてくれ」


「セバスチャンの言う事なら、信じるわ!」


「カトリーヌには国外追放になってもらう。そこで死んだ事にして、オレの国に来てくれ」


「セバスチャンの国? セバスチャンはダラスの出身じゃないの? 代々公爵家に仕えてる家系じゃなかったっけ?」


「オレは違うんだ。だから、カトリーヌの居場所はある。一生大事にするから、オレと結婚してくれ」


え……? セバスチャン今なんて言った?


「結婚……? 私と……?」


「オレはずっとカトリーヌが好きだった。カトリーヌが幸せなら良いと思ってたけど、あんな浮気者カトリーヌに相応しくない。公爵家も、カトリーヌが大事にしてると思ったから色々サポートしたけど、自分勝手な奴らばかりでイライラしていた。カトリーヌがもう要らないなら、助ける必要はない。勝手にすれば良いさ。要らないと言ったのは向こうだからな。仕事だってあるし、カトリーヌに不自由はさせない。カトリーヌがやりたい事があれば相談してくれ。できるだけサポートするし、一生大事にする。だから、クロード様じゃなくてオレを選んでくれ」


セバスチャンと、離れなくて良いの? 最近セバスチャンはまるで恋人みたいに接してくれるから、意識してたけど、それはルバートに婚約破棄された私を気遣ってくれてるんだと思ってた。


「本当に、セバスチャンは私が好きなの? 同情とかじゃないの……?」


「同情でこんな長い時間カトリーヌに執着するわけないだろ。オレがカトリーヌの執事になったのは、カトリーヌを好きになったからだ」


「……え?! いつ出会ってた?!」


「ルバートと婚約して、しばらく王城で教育を受けてたろ? そん時だ」


そうだ、一応王子の婚約者だからってしばらく后教育を受けてた。ルバートの兄君が王太子になって、地位も盤石になったらわたくしが妃教育を受けていたら余計な派閥を作るって言われて王城から出入り禁止になったのよね。


今後は公爵家を盛り立てて王家を支えてくれとか言われたけど、私が優秀過ぎて派閥が割れるからって理由だと後で知ったわ。ルバートはその頃には色んな令嬢と遊んでたから、とても王位を継げる器じゃなかった。あちこちに王家の種をばら撒かれたら困るし、公爵家に婿入りさせれば後はうちが面倒をみるからって……。なんだかこの国はみんな私をいいように使ってるわね。なんで気がつかなかったのかしら。


「どうした? 王城で嫌なことでもあったのか?」


「いっぱいあったわ! 教育は厳しいのに、出来なければルバートに報告されてバカにされるし、出来ても王太子の婚約者への配慮がないって言われるし。敵ばっかりだった。そういえば、あの頃他国の王子も来てたのよね。なんか……キラキラしてた……あれ……?」


キラキラ、他国の王子?


「ああ、それオレだ」


「え?! セバスチャン、王子様?! もしかして今留学してるヨハン王子はセバスチャンなの?」


「ああ、そうだ。オレが隠しキャラらしいぞ。キャシーお嬢様が調子に乗ってベラベラ喋ってたからな。全部探らせた」


「誰に?!」


「スチュアートだ。部屋では油断して独り言を言いまくってるらしい。今までは主人の独り言を聞くなんて絶対しなかったが、カトリーヌの危機だって言えば渋々探ってくれた。オレもいくつかルートがあるらしくて、一番良くて帝国にキャシーを連れていって、護衛やお付きに他の奴ら3人を連れていく」


「次期宰相や王子をお付きにするなんて無茶苦茶ね」


「オレも聞いた時は呆れた。他のルートは公爵家を継いでルバートと結婚して、オレらとも愛を育むとか、オレは帝国に帰るけど、たびたびキャシーを訪ねるとか、最悪なのは、オレがキャシーをどっかに閉じ込めるらしいぜ」


「閉じ込める多いわね……」


「まったくだ。今回はキャシーとルバートに結婚してもらう。それだとカトリーヌは国外追放になるからな。もちろんオレがついてくから安心しな。オレがカトリーヌを始末するらしいぜ。馬鹿げてる」


「そ、そんな事しないわよね?」


「まだオレを疑うのか?」


「疑わない! セバスチャンを信じてるわ!」


「よしよし。ルバートとキャシーが結婚すれば物語は終了らしいから、そこまで乗り切りろう。卒業パーティに死んだと思ってたカトリーヌとローザが現れるルートがあるらしいんだ。それを目指す。ローザが現れればルシアンはローザと過ごす予定だ。ルシアンにだいぶ我慢させてたからそろそろ限界だしな」


「ローザは大丈夫なの?」


「ああ、カトリーヌに謝りたいって泣いてるらしいぜ。紅茶を毎日2回飲ませたからもう大丈夫だ」


「良かった……」


「スチュアート一家とメアリーはオレが主人になったから帝国に連れて行く。真面目に働いてる使用人には次の仕事は用意してあるし、カトリーヌについて行きたい者はついて来させる。キャシーのクッキーの効果はもう抜けたからな。それでもキャシー達と甘い汁を吸おうとしてる使用人は居るし、そいつらまでは面倒見ないつもりだ。けど、ちゃんとしてる使用人は全員助ける」


「セバスチャン、いや、ヨハン王子。お気遣いありがとうございます」


「やめてくれ、オレはカトリーヌと対等でいたい。夫婦ってそんなもんだろ。オレと結婚してくれ」


セバスチャンが、跪いて私の右手にキスをする。


「カトリーヌ・ド・ルソー様、貴方が好きです。どうか、この私、ヨハン・ディ・ジュリアンの手を取って頂けませんか? 生涯を、私と共に過ごして下さい」


「喜んで。わたくしカトリーヌ・ド・ルソーは、ヨハン・ディ・ジュリアン様と生涯を過ごす事誓いますわ。どうぞこれから、よろしくお願いします」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る