第4話
父に家を追い出され学園に戻った。公爵家は最大4人まで学園に使用人を連れて行く事を許可されている。今まではメイドが3人、執事が1人。執事はもちろんセバスチャン。だけどメイドは1人だけになってしまった。
「メアリー、ごめんね。1人だなんて。みんなキャシーが良いって言うの」
私とキャシーで使用人の枠は8人居るんだけど、メイドはメアリー以外はキャシー担当だ。
今まで渋々私についてくれていたメイドが、お父様が王子の婚約者であるキャシーを大事にしろと言った途端、キャシーについてしまったのだ。メアリーもわたくしを担当するなんて嫌なんだろうけど、1人もメイドが居ないと困るから助かった。
「ご安心下さい。お嬢様は手がかかりませんから、わたくしひとりで問題ありませんわ。カトリーヌお嬢様のお世話をセバスチャンだけに任せるなんて危険過ぎますもの」
「そうよね。セバスチャンは忙しいもの」
「お嬢様のお世話なら、私ひとりでも充分務まりますからメアリーはあちらに行っても良いですよ」
セバスチャンは、メアリーの教育係だった。その為2人は仲が良く、軽口を叩きあう仲だ。今だってメアリーがキャシーのところに行く事はないと分かってるからセバスチャンはこんな事を言う。
「セバスチャンにドレスの着替えを頼むのですか?」
「それは無理よ! ホントにありがとうメアリー!」
思わずメアリーに抱きつく。はしたないけど、セバスチャンしかいないから許して欲しい。メアリーは、いつも私に優しくしてくれる。どんどんメイドから嫌われて、世話するのを嫌がられるようになった。でも、メアリーだけはいつも笑顔でわたしのお世話をしてくれた。
前世の記憶を思い出したとはいえ、令嬢として育った15年間があるせいで、お世話されるのは当たり前だ。貴族令嬢のドレスは1人じゃ着れないから、メイドは必須。
だから、メアリーに嫌われたら本当に困る。
メイド達とは友好な関係を築いていたのに、最近急に嫌われはじめた。これもゲームのせいかしら。でも、メアリーだけはずっと変わらない。セバスチャンの紹介で3年前に入ってきたメアリーは腕もいいし、口も固いからとても信頼できる。
「お嬢様、いくら同性でもそのようにはしたない事をしてはいけませんよ」
「ごめんなさい……セバスチャン」
やっぱりはしたなかったわね。叱られてしまったわ。はぁ……このままどんどんみんなに嫌われるのかしら。セバスチャンは大丈夫だけど、もう1人くらい味方が欲しい。セバスチャンはあっさり前世の事を受け入れてくれたし、メアリーも信じてくれるかしら?
「その、メアリーにも相談があるんだけど……」
「メアリー、学園へこちらの書類を至急届けて下さい。カトリーヌお嬢様のメイドが減っている分、キャシーお嬢様についている事を説明して、学園の許可を取ってきて下さい。キャシーお嬢様が部屋に戻るまでに必要です。急いで下さい」
「かしこまりました。お嬢様、あとで教えて下さいね」
メアリーはウインクして、書類を持って行った。メアリーは、大人の女性でかっこいいわ。私も、あと3ヶ月で働き先を見つけないと。鈍臭いから、メイドは無理かしら。最近はお友達も皆キャシーの味方だから、相談も出来ない。はぁ……どうしましょう。
「お嬢様、大事な話があります」
セバスチャン? なんだか怖い顔をしているわ。
「なあに? 私、なにか失敗したかしら?」
「お嬢様は、例の記憶を思い出されてから、一人称が私になっています。私の前では構いませんが、お気をつけ下さい。それから、例の記憶の話は誰にも言ってはいけません。先ほど、メアリーに言おうとされましたね?」
「どうしてわかったの?」
「分かります。お嬢様はわかりやすいので」
「味方は多い方が良いと思ったんだけど……ダメかしら?」
「ダメです。オレは無条件でお嬢様の事を信用しましたが、あんな話は普通は信じませんよ。いくらメアリーが信頼できても、この話はダメです。オレと2人だけで対応しましょう。メアリーの協力がいる時は、オレがうまく対処します。だから、オレとお嬢様だけの秘密ですよ?」
そうか、あまりにもセバスチャンがすんなり信じてくれたから麻痺していたけど、前世の記憶があってここはゲームの世界なんて、普通信じないわ。しかも、私はいろんな人に疎まれてるもんね。
「そうね。ごめんなさい。セバスチャンも誰にも言わないでね」
「もちろんですよ。さすがお嬢様です」
う……。セバスチャンの笑顔は反則だ。かっこよすぎる。どんどんセバスチャンに依存している。このままではまずい。
早急に、身の振り方を考えないと。
最近味方が少なくなっているから、学園で相談出来る人が居ない。せめてちゃんと話が出来る人を探そう。
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