第3話

「落ち着いて下さい。お嬢様の知る未来をもっと細かく教えて下さい。大丈夫、オレが居ますよ」


セバスチャンが、自分の事をオレと言うのは珍しい。昔はオレだったけど、最近はずっと私だったのに。そんな下らない事を考えていたら、セバスチャンに見つめられた。


セバスチャンとは、5歳も違うのに! 優しいお兄さんだと思ってたのに! なんでこんなにドキドキするのよ!


……そういえば前世の私は、セバスチャンがカトリーヌを助けるシーンが大好きで、何度もリピートしていたんだったわ。


チラッと映るだけのセバスチャンの姿が、とってもかっこよかったのよね。


「お嬢様、覚えているのは以上ですか? とても大事な事ですので、些細な事も全て教えて下さい」


「思い出したストーリーは、これで全部よ。たしか隠しキャラが居たんだけど、私はそこまでゲームができていないから、誰が隠しキャラなのかは分からないの」


「些細な事でも良いので教えて下さい。まだ何か隠していますね。おそらく、オレの事で」


どうして分かるの。セバスチャンはやっぱり凄いわ。


「ゲームの内容には、関係ないわ」


さすがに、前世でセバスチャンに萌えていたなんて言えないわ。


「お嬢様?」


う……セバスチャンの圧が怖い。


「その、ホントに大した事じゃないの。恥ずかしいから、聞かないで」


「だめです。先ほどなんでもすると仰いましたよね。お嬢様は、約束を破るのですか?」


「約束は、私の前世の話を全部した事で果たされてるわ!」


「いいえ、果たされておりません。ゲームの内容には関係なくとも、お嬢様が隠し事をなされば私はお嬢様をお助け出来ません。良いのですか? 破滅しても」


それは困る。破滅したくないし、死にたくない。


「それは困るわ! セバスチャンしか頼る人は居ないのに!」


「そうでしょう? ですから、教えて下さい」


近い!

色々近い!


うぅぅ……セバスチャンはやっぱりかっこいいわ……。


「……恥ずかしいの」


ああ、顔がどんどん赤くなっていくわ。どうしましょう。困ったわ。


「お嬢様、オレはお嬢様の恥ずかしい事を全部知っています。今更一つ増えても問題ありませんよ」


う……うぅ。確かにセバスチャンはルバートと婚約してすぐうちに来てくれたから、いっぱい失敗した事もバレてるし、散々フォローもして貰った。


「いっそ、お嬢様が誰にも知られたくない恥ずかしい秘密を今ここで全て申し上げましょうか?」


秘密って何よ!

セバスチャンは、隠し事をすぐに暴いてしまう。もしかして、誰にも言ってない失敗や秘密も知ってるの?


「……やめて、お願い、言うから……」


降参だ。無理。

セバスチャンに適う訳なかったんだ。


「良い子ですね。さぁ、教えて下さい」


くっ……。いい笑顔ね。

黒いわ! けど、かっこいい。


ズルい。この笑顔は反則だ。


「その、前世の私は、ゲームにチラッと映っただけのセバスチャンが好きで何度も見ていたの」


「……」


あ、あれ? セバスチャンの顔が真っ赤なんですけど。


「ほら、大した事なかったでしょう? お互い恥ずかしいだけじゃない!」


「そんな事ありませんよ。とっても重要な情報です。言って頂き、ありがとうございます」


「そうなの? でもやっぱり恥ずかしいわ……その記憶を思い出してから、セバスチャンの顔を見るとドキドキするのよね」


「それはいい傾向です。さぁ、お嬢様、もう夜も遅いのでお休み下さい。明日から作戦を立てましょうね。大丈夫、お嬢様はオレが守りますよ。だから、学園にも連れて行って下さいね」


「分かってるわ! セバスチャンが居ないと不安だもの。いつもセバスチャンにはついてきてもらっていたから、お父様も不審には思わないわ」


「そうですね。学園でも頑張りましょうね。お嬢様」


そう言って笑うセバスチャンは、とってもかっこよかった。

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