ウイスキー

ウイスキーの酔いは

些細な殺意を帯びて

グラスの氷がカラカラと鳴るが

それは憎しみを増長させる

静寂の部屋の中に

時折、情報が含まれて

アルコールが体中に回っていく

目を閉じると人々の視線に刺され

よりいっそうくらくらした

部屋の中のクーラーが

夏の到来を告げている

ナイフがあったら一気に

気が済むまで刺し続けたいと

空想をしていると

電話が鳴ったが

それは誰でもなかった

話す相手はどこにも存在しない

いつの間にか

煙草に火をつけていた

音楽が聞こえると

平穏が訪れる

揺らいでいく感情が

跡形もなく消えていった

微かな響きで

現実に引き戻される

疲弊した体を

煙が突き抜けていく

思い出せる記憶の中には

懐かしいものは一つもない

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