線香花火

夜の中の淡い沈黙

隣にしゃがむあなたの声は

悲しい月の光のように

穏やかに消えていった

バチバチと火種が燃え

火花が赤く飛び散る

夏の熱気が辺りを包み込み

物悲しい涼しい風が吹いた

今年の夏も終わりに近づく

毎年、切なさをまとい

この季節はやってきた

暑さに憂鬱になる日もあったが

実際はそれすらも過ぎてしまえば

少しの懐かしさも感じる

僕は珍しくあなたに

本音を話していた

無意識の中に

時間だけが過ぎていく

ぽとりと火種は落ち

新しい線香花火に火をつけた

あなたの顔が

火花の淡い光に照らされている

僕は空を見上げて

星を見ていた

今日はあなたとの別れの日かもしれない

僕は東京に行く

ビルの立ち並んだ街は

僕に何をもたらすのだろう

いつかあなたのことも

忘れてしまうのだろうか

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