河原

薄汚れた犬にも

月の淡い光が照らす

そんな段ボールの中にも

僅かな優しさが含まれている

視線は果たして

僕を排除しようとしているのか

川の水が流れていく

道路の街灯の光に辺りが照らされている

電信柱の影が

河原に映っていた

緑色の雑草は

少し夏の夜の風に揺れている

あの日、感じた理由のない憎しみも

こんな狭い風景の中に

穏やかに溶けて行こうとしていた

空には暗い色の雲が浮かぶ

あなたは今、何をしているんだろう

僕のことを考えていたとしたら

いいのになと思う

暗い夜の中にも

小さな希望の光があるような気がして

それは見当違いな夢想に過ぎないかもしれないけれど

河原には誰もいない

何もわからない気がした

でも探すこともできないような

だから小石を拾い

川に向かって投げた

ぽちゃんと音がした

そこには願いが含まれている

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