桜餅すらわからない世界

@koonaka2002

2082年 四月九日 桜餅事変

「爆弾でも落ちてこないかな」


始業式、校長の第一次世界大戦に絡めた道徳的話を聞きながらそんなことを考えていた。


校長の話が退屈というのもあるが、それにしても退屈だった。


あまりに僕の世界には彩がなかった。


文字通り僕たちの世界にはなかった。




色が 




・・・・・・






・・・・・・


昔、信号機は左が進むで右が止まるでは無かったようだ。


かき氷のシロップはいちごにレモン、ブルーハワイなんて物もあったらしい。


夢のような話だが、夢にまで色がついていたそうだ




約四十三年前僕が生まれる二十七年前


ある論文が発表された。


「モノクローム理論」


・人種差別への対策


・スマホやゲームの依存症への予防


・グロテスクな表現の緩和


これらを、一括に担えるのが色を消すこと、それこそが「モノクローム理論」だった。


その理論の有用性が度重なる思考実験によって証明され政策として施行される事となった。


具体的な政策として最初は、テレビやスマホなどの媒体の色から白黒になっていった。


これにより、劇的な改善が見られたのはスマホの無駄な使用時間の減少だった。


何かの改善がみられてからは拳銃の引き金を引き人を殺すみたいに一瞬だった。


政策はどんどんエスカレートしていき、三十年前には国民全員に見える世界が白黒になってしまうコンタクトが手術によって取り付けられた。


・・・・・






・・・・・


校長の話も終わり、クラスに戻ってホームルーム、始業式の日に恒例となっている大掃除を終わらせ帰りの支度を済ませようとしていた時、やけに背の高い一反木綿のように面の薄い男が話しかけてきた、よく顔を見るとクラスメイトの指輪 敬だった。


「俺の家でパーティをやるから来い」


「パーティ?」暗に行きたくないという意識が乗り移った堅いクエスチョンマークだったと思う。


「お菓子があるぞ」


「ん?」先ほどより少し柔らかいクエスチョンマークだった気がする。


「桜餅や大福に草団子」


「人をもので釣るのか、僕はつられる魚にはならない」


「魚じゃなく、人を釣ろうとしているから菓子なんだ、お前を釣ろうとしているから和菓子なんだ」


僕の求めていた答えだった。


気が付くと荷物を家に置いた僕は自然と自転車に腰をかけていた。


僕の家から高校までの距離はかなり近かったので、自転車を使うことはない。


それこそ僕の大親友である指輪の家に行く時くらいだ。


三十分程こぐと、彼の家が見えてきたとても大きな家で先ほどのパーティという言葉には似ても似つかない「私は日本のこころです。」と言わんばかりの家だ。


着くと、少し回りを見まわしてからインターフォンを鳴らした。

インターフォンをならすと、白色の下地で微小な黒色の猫が印刷されたTシャツに夏でも着れそうな灰色のハーフパンツを着た指輪が学制服と比べると一見ラフでシンプルな恰好のおかげでいつにもなく一反木綿みが増して、玄関から出てきた。


シンプルとはいっても、制服もたいがいシンプルなのでゴマ豆腐が豆腐に変わったくらいの衝撃である。


手招きをしてきたので、両開き門扉をあけて庭に入ると雪兎みたいな小さい桜の木があった。


そういえば桜餅もあるといっていたなどと考えていると、古風ながらバリアフリー化が施された玄関にたどり着き靴を脱いで、市松模様のスリッパを履くと客間に案内される。


客間は中央に大きな円卓がありその四方に、椅子が置いてあるという作りのものだった。


飾ってあった絵画のせいもあるとは思うが意外と洋風だと感じてしまった。


椅子に腰かけると、指輪が合図でも見たかのように徐に


「和菓子はミオがつくってくれる」


ミオとは、この指輪敬の妹でこいつとは似ても似つかないほど明媚な子だ。


正直ここに来た目的の一つでもある。


あったことは二度ほどしかないが、脳裏に焼き付いている。


暫く経つと


「こんにちは!できましたよ」


明朗快活な声と同時に、


ちょうどさっきの桜みたいに小さく、本当に月で餅でもツイてそうな感じの雰囲気すらある白いワンピースに身を包んだ記憶通りの少女が現れた。


「やっぱり敬の白さは妖怪じみているけれど、ミオちゃんの白さはいい意味で浮世離れしているな、」


と茶化すように言ってみた。


すると


「誰が雪男だ」


と腹をすかしたハイエナが餌を見つけたみたいに、早く突っ込んできたがどう見ても雪男という表現は自分の筋肉を過大評価していると思った。


彼は雪男というより、ゆきに漬けられたおとこという感じがする。


間を紡ぐように、


「草団子に大福それに桜餅そしておはぎです。」


彼女が息をするより落ち着いた口調で説明する陰に僕は深い衝撃を受けた。


おはぎだ


僕はおはぎを食べることができない。


別に苦手だから食べれないといえばいいだけなのかもしれないが、彼女が気にするかもしれないし理由を聞かれたら思い出せない。


なんだか、言ってはいけないものだった気がする。


何とかごまかしてほかの人に食べてもらうしかない。


だがまた一つ問題が起きた。


これに関しては、大福や草団子は形状が違うから何ら問題がない。


だが、桜餅は形状が全く一緒だった。しかも色が思い出せない。


果たしてさくらもちは白だっただろうか黒だっただろうか?


普通に考えたら、白だ桜の色だから。


だが、何か黒い感じだった気もするなぜだろう?


とてつもないこととなった僕を尻目に、二人は何も気にせずいただきますの姿勢についた


僕もあわてて追いつく


『いただきます」


二人ともパン食い競争のように菓子に視線を向ける中草団子に箸をつけながら一人静観しているとやがて黒い物に敬がかぶりついた、


「うーんたまらんなこのモチモチ」


彼女は白いものにを口をつけた。


「まろやかー我ながら名前に恥じずうまいことできたな」


名前に恥じず?どういうことだろうと悩んでいると敬が空気を紡ぐように会話を入れた、


「あの桜は、ミオが生まれた14年前からあるんだ美麗だろ」ちょうど客間の窓から見える先ほどの小さな桜を指さした


「ああ確かに・・・美麗な桜だ」一瞬の静寂ののち水面に花びらが落ちるみたいにある考えを思いついた。




・美麗な桜→美桜


美桜はびざくらとも読めるが、みおうつまり、ミオとも読めるこという考えに。


つまり白いほうが桜餅だ。

頭の中の霧が晴れてすがすがしいと同時に、


なぜ、おはぎが嫌いか思い出した、




【うんこに似ているからだ】




本当に頭の中で解決できてよかった。


・・・・・・






・・・・・・


この日は、桜餅を食べそのまま帰ろうかとした時敬に呼び止められた。


「面白いことを考えている」、


「また今週の週末つまり四日後にこの客間に来い」


それだけだったチャリを漕ぐのは嫌いだが面白いことは好きなので行こうかと思った





























































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