第6話

「さっき弾いてたのは、なんて曲ですか?」



「エチュード10‐3



ショパンだね」



「へえー…


ショパン、好きなんですか?」



「え…


うん、まあそうだねえ


よく弾くかなあ…」



「他には、どんな曲があるんですか?」



「他…


そうだなあ…



幻想即興曲とか英雄とか、革命とか華麗なる大円舞曲とか子犬のワルツとか…後はノクターンの2番とかね



その辺は、ピアノとかクラシックを知らない人でも色々なところで聞いたことある、なんて曲があるんじゃないかな

名曲中の名曲だしね


ピアノを弾いてる人は、幻想即興曲とか英雄、革命は憧れるんじゃない?

後はエチュード25-11とか」



「わあ!

弾いて下さいよ!」



そう言うと先輩は、ははは、と眉間に皺を寄せて笑った



「全部完璧には…

一応、ピアノにもレベルってやつがあってね…


ピアノ弾けるからって、何でも弾ける訳じゃないんだよ」




そうなんだ


レベルか…


知らなかった…



まあ、でもそうか…


よく考えたらピアノ弾けるからって、なんでも弾けるってわけでもないよね




「まあ、まだまだ名曲は沢山あるから


きっとショパンを知っていったら


冬至ちゃんの好きな曲が見つかると思うよ」






私の…好きな曲…



気付けば、私はいつの間にかクラシックをよく聴くようになっていた




近所のレンタルショップでクラシックCDを借りては、気に入った曲を父にせがんでCDに焼いてもらった



それをCDプレイヤーに入れては、家の中は勿論学校の行き帰りに電車の中で聞いていた



どんどん、好きな曲が増えていった


月光


パッヘルベル


月の光


アラベスク


トロイメライ


飛翔


シシリエンヌ


トッカータとフーガ


四季



ピアノだけじゃない


色々なクラシック音楽を聴いた







「トッカータとフーガ?…なにこれ」


友達が、たまたま私のスポーツバックに入っていたCDのタイトルを見て言った



「バッハだよ」



「クラシックかあ…


私あんま地味な曲好きじゃないんだよね」




地味な曲か…



友達はカラオケでよく山嵐の歌を歌っていて、私はこのアーティストは詳しく知らないんだけど多分ラップとかの音楽が好きなんだと思う



確かに友達の好みの音楽の系統?と言うのかそう言うのとは違うよなあ…なんて少し寂しい気持ちになった




こうして、友達と帰る時も楽しいんだ


でも、友達と帰る時は音楽室に行けないから先輩に会えない…なんて思っている自分もいた


だからって音楽室以外で先輩を見かけても話しかける勇気なんて持ってなかった

そもそも三年の教室と二年の教室は階が違うし…



でも




「冬至ちゃん」



先輩は私を見かけたら話しかけてくれた



「立川先輩!

なーんですか?」



先輩とクラシックの音楽の話をしている瞬間が、最近楽しいと思っている自分がいた

と言うより、友達と居るより先輩とクラシックの話をしている方が楽しい…なんて思っている


そして先輩とクラシックの話を出来ている自分が好きになっていた




「そうだ、家にショパンのCDがあるから、聞いてみる?」



「えっ」




家に…?






駅を降りて、先輩の自宅へ向かった



「…あ、雷?」


先輩の家に向かっている途中、雷鳴が響いてきた


「ホントだ…」

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