第5話

放課後の音楽室


先輩はグランドピアノで、その楓と言う曲を弾いてくれた



そもそも元の原曲は知らなかったけど

先輩がピアノで弾いてくれたスピッツの楓の曲は



すごく聞きやすくて、落ち着いた雰囲気のするメロディで


そして



ちょっとだけ、感傷的になるような曲だった




「原曲…と言うかスピッツの楓のCD聞いてみたいなあ…」



単純に思ったことを口に出した

これで歌詞…歌が入るとどんな曲になるんだろうと



「あー…そっかあ…


中古も売ってるかもしれないけど…


見つけるの大変だと思うから、普通にレンタルで借りて聞くか…



よし、一緒に行こう」



そう言うと、先輩はピアノの蓋を閉めて帰り支度を始めた



「えっ…一緒に?」



「え?一緒に行かないの?」


先輩が不思議そうな顔をして言った




「あ…いえ…



はい、行きましょう…!一緒に」




…あれ



なんで私はこんな



嬉しい気持ちになるんだ…?








駅を降りて、近くのレンタルショップで楓を探した



「あった」



先輩がCDを見つけてくれる



「立川先輩は、楓の歌知ってるんですか?」



「うん、知ってるよ」



先輩がレジで会員カードを出しながら言った



「だからピアノ弾けるんですね」



「いや、そう言うわけじゃなくて…楽譜パソコンで落として譜面見て弾いただけだよ




はい、どうぞ」




先輩が私に楓の入ったCDの袋を渡してきた



「聞き終わったら俺に渡して


あ、レンタル期限一週間だよ、忘れないでね!」


と言って先輩が笑う



「あっはは、わかりました


立川先輩、ありがとうございます」



私はお辞儀をした







帰り道



何故か浮足立っている自分がいた



先輩が借りてくれたCD



それを持つ手に力が入った



偶然じゃなくて


自然に



また、先輩に会えるって…














翌日、私は足早に音楽室へ向かった





昨日、父にせがんで楓のCDを焼いてもらった


ベッドに入って、その焼いたCDを何度も何度もリピートして聞きながら眠りについた




この楓って曲…


聞けば聞くほど、歌詞を読みこんでいくほど


なんだか悲しい、切ない曲だなあ…なんて思う







音楽室に近づくにつれ



クラシックメロディが流れていた




綺麗な音…



また先輩関係ない曲弾いているな…





激しく

時に優しく

緩急を繰り返しながら

流れるような旋律



何処かで聞いたことのある曲


聞き入ってしまう曲



聞いた瞬間、ぐっと心の中に入ってくるような…


惹きつけられる







音が止まったタイミングで、扉を開けた



「先輩、また関係ない曲弾いてる」



と言うと


「あはは」


と笑っていた



ピアノ弾くのが本当に好きなんだな…




「あ、これ昨日のCDです


ありがとうございました」



「早いね

もういいの?」



「はい


昨日父に焼いてもらったんで…」



「そうか」


そう言うと先輩はCDを受け取る

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