ガラスの宿から出してくれ!

@koonaka2002

病院の治療費

都会のコンクリートジャングルに一つたたずむクリスタル色のビルディングは壁が全面ガラス張りで尚且つ床下まで東京タワーの展望大などにある底見えガラスになっていた。


そこはビジネス用の商社ビルでもなければ、展望台というわけでもなかった。


むしろ見られてしまうものかもしれない。


それは宿だった。


おおよそ、今の時代に全くそぐはないプライバシーがどこかに仕切りと一緒に飛ばされてしまったような風体を擁していたがこれは宿だった。


一つ普通の宿と違う点を挙げるならば、止まるのにお金が必要ないという点だ、こんな都会の一等地で一泊でも泊まろうものなら金は薬みたいに溶ける。


むしろお金がもらえるのだそうだそれなら、アルバイトのようなものだ。


目的は金持ちお医者先生の興味本位的思考実験らしい、






俺はガラスの宿に来ていた。

入り口には大きな鷲のエンブレムが飾られている。


まず、この建物で唯一壁で覆われているエントランスに回転扉押して入る。


ぱっと見の作りは、一般的なホテルのエントランスと同じで入口の右手に対になるソファとテーブル左奥手に受付口と観葉植物があった。


受付に行くとあまりに一般的な恰好のホテルウーマンがいた。


「一名様でよろしいですか?」


「はい」


「何日間お泊りになりますか?」


「五日間」


「ならば5万円になります。お納めください。期間中はお出になることはできません。お部屋は十二階の3号室になります。」前払いということをこの時に初めて気づいた。同時にカードキーを受け取った。


通常ならば異常な会話を、タッキングを知らないリコーダー奏者のように機械的にこなした。


ビルのサイズに対して少し小さなエレベーターに乗り込んだ。


街を見ながら食道を逆流するげろはこんな気持ちだろうかと思いながら、十二階に向かった。


エレベーター出て、その部屋に向かう。


指定された部屋の前まで来ておもったより薄い扉の鍵を開けると、


そこはガラスだった。

部屋に入ると、ガラス張りだと思っていた6畳ほどのスペースの中央に、紙切れと手帳が置いてあった。


・食料は入口ポストから入手


・水分も同様


・ごみはポストに戻す


・提供時間は午前7時 正午 午後7時


・日記をつけること 




その日記帳を開いてみるととても一般的な日記帳で皮は合成皮紙には罫線が引かれておらずメモ帳にも使えそうな感じだ。やがて後ろを見て見ると銀色ポストがあることに気づいた。




一日目


特に変わったことはない強いて言うなら、向かいのビルの社員に向けられる視線がピりつくくらいだろうか


二日目


カーテンを閉めるふりをすることで少し視線を紛らわせることに気づいた。最初の日は風呂に入りたいなと思っていたのだが入りたくなくなった。


三日目


異常な気持ち悪さがある。感情の波が防波堤に打ち付けられるのがわかる。


四日目


怖い、向かいのビルの奴がここを出たとき殺しに来ることはわかっている。


五日目


うわうわうわうわじまうううきわうきうきうみうに


気が付くと、病院のベッドに寝ていた、そこには看護士がいた。


鷲のエンブレムを胸に抱いた綺麗な人だった。



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