第2話――出会いは突然に
「ちょっと、オイ!そこ!早くどけよ!!」
えっ、何事…?
「プーーーーッッ! キキーーーッッッッッッ!!!」
あ、やばい!ひかれる?!死んじゃう?!よけなきゃ!
あっ、腕を掴まれたっ…?
「スッッッーーー……」
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新宿三丁目の交差点にて。
「大丈夫?」
声をかけられた。
正直、今はパニックと安堵で何も感じられない。
「…いや、そもそもこのシチュエーションで 「大丈夫です!」 って言える人って、いるの?」などと可愛げのないことをわずかに考えながらも、
「ええ、大丈夫で…す…」
と返しておいた。
と言いつつも、声をかけてきた相手が全く知らない人なので、顔を見てみる。
ちょっと天パっぽい髪なのに、ウェーブは規則的で、手入れされているな、と思う。
ブルーのシャツにベージュのパンツ。なんとなく隙のない格好だ。
切れ長の目に白い肌。
背も高い。180cmはありそう。
…割と、私のタイプの人だ。
いや、そんなことを考えている場合ではない。
「ああ、それなら良かった。あやうくひかれるところだったんですよ。危なかった…。」
「はあ…」
「具合、悪いですか?救急車呼びます?」
「え、いや…」
「それなら、…どう、せっかくだから、お茶しません?こんなふうに誰かを助けたのって初めてですし」
「は?うん…、…え?」
私は、とりあえず、あなたについて行くことにした。
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「ええと、シトラスティーを一つ。
僕は、うーん、何がいいかな…。じゃあ、ブラックで。いつものを」
私とあなたは、とある喫茶店に来ていた。
夜10時をまわるところだというのに、店内にはかなり人がいる。
ただ、こんな時間に来ているということもあり、どの人もギラギラして、私の周りにはあまりいいないような人種の人達にも見える。
「いやあ、本当にびっくりしたよ。だって、君がふらふらと交差点の方に歩いていくからさ、
赤信号だって言うのに。それで色んな人が君を呼び止めたんだけど、聞こえてないみたいで。
それで、僕が君を引っ張ったんだ」
「あ、そうなんですね」
「うん、だけど本当に安心したよ。無事で良かったね」
「ああ、ありがとうございます」
一瞬、お互いに黙り込む。
店員さんが、飲み物を運んでくる。
「あ、この紅茶、美味しい!」
思わず呟いてしまった。
「そうか、良かった。ここのは本当に美味しくてね」
あなたが微笑んだ。
「そういえば、お兄さんは、なんであそこにいたんですか」
「ああ、バイトの面接の帰り道で」
「ずいぶん遅い時間なんですね」
「まあね…。
ところで、君、いくつ?大学生?」
なんで私が大学生に見えるの?私バリバリの高校生なんですけど、と思ったが、今自分が私服を着ていることを思い出して(私の学校は私服通学なのだ)、
「いや、19歳。専門学校に通ってて」
と、思わず嘘をついてしまった。
別段理由はないが、なんとなく背伸びしてみたかったのだと思う。
「そうかー。どうりで服装がオシャレだと思ったんだよね。僕、
「えー、お兄さん、すごいですね!私、理数系全然だめで。数学とか教えてほしいくらいです」
「え、ほんと?なら、教えてあげようか?
…あ、でも君は専門学校に通ってるから、あんまり関係ないか」
嘘がバレたかな…、とちょっと気にした。
「あ、言われてみればそうですね。…でも、今日はありがとうございました。救っていただいて」
「ああ、もうこんな時間か。」
「お会計、助けてもらったお詫びに、させてください」
「いいよ、僕が払うから」
「え、でも」
「いや、僕が払う。でも、一つお願いがあって…」
「なんですか?」
「一晩、一緒にいてくれないかな?」
あのときこれを聞いたときは、正直ちょっと引いた。
身の危険も感じたし、あそこでお金を払って逃げてしまえば、何も起こらなかったんだと思う。
でも、私は、あえて危険な道を選んでしまいたい、と思ったのだ。
自暴自棄になったわけではないが、なんとなく、なるがままになってしまいたかったのだろう。
「…ええ、いいですよ」
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