第11話 お兄様が昇進ですか!?おめでとうございます!!
「お兄様が昇進ですか!?おめでとうございます!!」
「ありがとう、ローズ」
そう言いながら嬉しそうに私の頭を撫でているのは、私のお兄様であるアスター・ラヴィソン。私と同じ赤い髪に緑の瞳を持つお兄様は、お父様と同じで私を溺愛してくれている。
既に社交界デビューを終えているお兄様は、普段は魔法省に勤めていて。我が家の特産品であるバラの成長や品種改良に魔法が活かせないかと、日々研究をしているのだけれど。
何を隠そうこの人、ゲーム中の隠しキャラなのである。
見た目がいいから、そりゃそうだろうと思わなくもないけれども。
実は一人だけ、学園とは関係ない場所で出会う人なのだ。
だから、隠しキャラ。
ちなみに隠しではないけれど、ヒロインのクラスの担当教師も攻略キャラだったりする。
教師、何やってんだ。
ただお兄様に関しては、実は最後の最後までローズを倒すことに躊躇していて。
結局元に戻せない以上、倒すしかなかったんだけどさ。倒されちゃったんだけどさ。
でもその後のエピソードで、それでも妹の事を思っているっていうのが分かるセリフがあったりして。
なので割と、この人だけは安全かなと思ってる。
まぁ、兄妹だしね。逃げるのは無理だし、家族仲悪いの嫌だし。
「ローズも全適性があったと聞いたよ?凄いね」
「そんな……たまたまですから。ちゃんと扱えないままでは意味が無いので、今必死に魔導書を読みこんでいるところなのです」
「そういう所がローズの凄いところなんだよ。力があるからっておごることもない。本当に偉いね。ローズがとてもいい子で、お兄様は誇らしいよ」
「お兄様……」
何よりこうやって、ストレートな言動で褒めてくれるから。
優しい笑顔で頭を撫でてくれるお兄様は、私にとって自慢の兄なのだ。
「でも……だからこそ、お兄様は心配だよ…。フレゥ殿下にも認められているというし……」
あ、珍しくお兄様の目がちょっと不機嫌そうに細められた。これ、割とガチで嫌がってるな。
お父様もそうだったけど、どうやらお兄様にとっても私の王妃候補というのは、あまり喜ばしい事ではないらしい。
同じ意見でいてくれて、妹はとても嬉しいです。お兄様。
「本当は辞退申し上げたいのですが……」
「難しいよね。王族の方から請われてしまっている以上、下手な理由で断れないし。今の貴族間の力関係を考えれば、我が家が最も適切なのも理解は出来るんだけどね……」
そうなんですよねー。
下手に役職のある家の娘ばかりを王家に嫁がせるわけにもいかないし、かと言って力がなさ過ぎても困る。
本当に、絶妙なバランス関係で成り立っているのだ。
「可愛くて頑張り屋で素敵な女の子のローズを選びたくなる気持ちはわかるけれど、私の可愛い妹にそんな大変なことはさせたくないのが本音だよ」
お兄様お兄様、それは明らかに褒めすぎです。若干どころじゃなくシスコン度合いが酷いです。
「いつかはどこかへ嫁いでしまうのは分かっているんだけれどね?もう少し、私たち家族のローズでいて欲しいんだ」
「お兄様……」
あぁ、すごいシスコン……。
でも私はそんなお兄様も大好きなので、私もきっとかなりのブラコンなんだろう。
だってお兄様カッコイイし…!!優しいし…!!
なんか話しててすごく安心できるんだよ…!!
お兄様のお嫁さんになる人は幸せだろうなぁ…。いいなぁ、うらやましい。
私のこれは、家族愛の域を出ないものだけど。もしも本当に他人だったら、きっとお兄様に惚れてただろう。
でも家族だからこそ、言えることがある。私だけの特権が。
「たとえ私がどこに嫁ぐことになったとしても、私はずっとお兄様の妹です。それは死んでも変わりません」
「ローズ…!!あぁっ…、やっぱりどこにも嫁がせたくないっ…!!」
そう言って、ぎゅうぎゅうと抱きしめてくれるお兄様。
まだ社交界デビュー前とはいえ、頭をなでたり抱きしめたりなんて、貴族の兄妹として考えたら少しスキンシップ過多なのかもしれない。
特に男女だから、なおさら咎められる可能性は高い。
けど、我が家ではそんなことはなく。
むしろさっきから使用人たちが、なんだか温かい目でこちらを見ている気がするけれど。
まぁ要するに、これがラヴィソン公爵家では普通なのだ。日常なのだ。
これだけ家族仲がいいので、変わってしまったローズですらお兄様は愛してくれていたのだ。たとえ、自分の手で妹の命を奪ってしまっていたとしても。
というかさ、割と残酷な運命だよね。お兄様にとっても。
元に戻せないから倒すしかないって、シナリオも随分と酷い選択をさせる。
でもお兄様、安心してください。
私は何としてでも、魔物化ルートからは外れてみせますから…!!
そのために何としてでも、青王太子の婚約者候補から外れなくては…!!
「お兄様みたいに、私を本気で愛して下さる殿方のところにしか嫁ぐつもりはありませんよ?」
「ローズ……」
だから、つい零してしまった本音に。
嬉しそうな悲しそうな、複雑そうな表情をしているお兄様の姿が、妙に印象に残った。
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