第10話 喜び勇んで図書館へ!!
魔法の存在を正しく学び始めてから、屋敷の書庫に入り浸ることが多くなった。
というか、たぶんこれ誰でもそうなると思う。
だって魔法だよ!?しかも覚えられない魔法は私にはないらしいんだよ!?
じゃあ片っ端から覚えようってなるじゃん!?
結果。
我が家にある魔導書は、一年で読み終わりました。
いや、その……流石にやりすぎたなって、思ってますよ?
思ってますけどね?
でもその程度で、この情熱が止められるわけがない…!!
ってことで、お父様にちゃんと許可を取って……。
いざ!!
喜び勇んで図書館へ!!
と、やってきた私は……。
「はわぁぁぁ……」
見渡す限りの本、本、本…!!
別に本に飢えてたわけじゃないけど、この光景はなんだか気分が上がるっていうか……。
だって!!ただの本じゃないんだよ!?
このエリアは全部魔導書なんだよ!?
入れるのは上位貴族だけっていう場所もあるんだよ!?
この時ほど、自分の生まれに感謝したことはないよね!!
ちなみにあの不思議現象を巻き起こした魔導書は、上位貴族の家なら割と必ずあるようなものらしい。とはいえ魔導書であり魔法道具でもあるので、普段は簡単に手に取れないらしいけど。
流石にあんな風に魔法が飛び出してくるような仕様は、普通の魔導書にはないらしくて。もしあるのならそれは罠ですって、家庭教師に言われてしまった…。
まぁでも、そうだよね。
何も知らずに開けたら危ないものを、簡単に手に取れるようなものに施すわけがないよね。
だからこの城内の図書館の魔導書は、身分や適性によって読める読めないが明確になってるわけだし。
何も知らずにそんなものを開いたら、それこそ大惨事になる。
あぁ、そうそう。
この国割と魔法に力を入れてるらしくて、平民にも十二歳になったら必ず全員に適性の有無を判別させるらしい。
あと驚いたのは、その前とその後にも学校があるという事。
平民の場合は子供でも労働力になるからってことで、長期間親から預かることはしないらしいけど。それでも十歳から読み書きと簡単な計算を教えて。十二歳で魔法の適性があった子は、さらにその先の学校で使い方を教えるんだって。
その辺りちゃんとしてて、割といい国なんじゃないかと思った。
まぁ実際には、昔魔力を暴走させた人がいるっていう事実を重く見た結果なんだろうけど。
それでも身分に関係なく、魔法の才能さえあれば国の魔術師にはなれるらしいし。
もちろん魔力の要素って、どうしても貴族に多いらしいから。たぶん遺伝とかなんじゃないかなとは思ってるけど、この世界に遺伝子なんて概念すらないしね。本当のところは分からない。
でも子供の選択肢が増えるっていうのは、すごくいい事だと思う。
大変だと思うし、苦労も多いと思うけど。国がちゃんとその辺りを斡旋してたりフォローしてたりするって、ついこの間家庭教師に習ったばっかりだから。
今後もっと、平民出身の魔術師が増えたらいいなーって思ってる。
って、事をね?
ちらっと口にしたのがいけなかったんだと思う。
だって…………
「…………フレゥ殿下……なぜ、こちらに……?」
目の前にはなぜか、青い瞳と青い髪の王太子様。
うん。その色割と私の目に悪いから、出来れば見たくなかったんだけど?
「私もたまには自分の足で魔導書を探してみようと思ってね。まさかローズに会えるとは思ってもみなかったけれど、久々に会えて嬉しいよ」
私は一切嬉しくないですが。
っていうか!!何偶然を装ってきてんの!?
明らかに分かってて来たよね!?わざわざ私がこの場所にいる事知ってて来たよね!?!?
家庭教師に話してるしね!!図書館に行きますって!!
そういうの、職権乱用って言いませんかね!?!?
と、思いはしても。
顔にも態度にも出さない。
流石にね、少ないとはいえ人の目もあるしね。
あと私だって一応、公爵令嬢だし。不本意ながら、この王太子様の臣下でもあるわけだからね。
不本意だけど…!!心の底からご免こうむりたいけど…!!
「ローズは全てに適性があったんだよね?それならきっとここにあるどの魔導書を読んでも、全て吸収出来てしまうんだろうね」
「全て…かどうかは分かりませんが……。全て読んでみたいとは、思っております」
「それは凄いね。流石に私でも、この全てを読んだところで身につかないものがあるからね。民たちの中から魔術師を輩出することを良しと考えるローズにとっては、どこにどんな魔導書があるのかを知っておくのも大切な事なのかもね」
ねぇ……何で、会話を続けるかな?
私はここに、読書をしに来たの…!!青王太子とおしゃべりをしに来たわけじゃないんだけど…!?
っていうか、ここは本を読む場所でしょ!?私じゃなくて本に目を向けてよ!!私は青王太子じゃなくて本だけに視線を注いでいたいのに…!!
あと、さりげなく話してもいない内容ぶっこまないでくれる!?
「民たちの中から魔術師を輩出することを良しとする」なんて。人によっては嫌味に聞こえそうなそれも、推奨している王族からの言葉だと意味合いが変わってくるんですけど!?
なのに。
「公爵家の蔵書もかなりのものだろうけれど、ここには魔導書以外にもきっと君の役に立つ本がたくさんあるよ。少なくともこの魔導書全てを読みきるにはかなり時間がかかるだろうから、私の方からローズが城へ通う許可を申請しておくね。すぐに公爵家にその旨の書かれた書類が届くはずだから、楽しみに待っていてね?」
…………うん……お節介。
第一そんなことしたら、私と青王太子が親密ですって言ってるような物じゃない!?何してくれようとしてんの!?
しかもこれってさ……
「いいえ、そんな…。フレゥ殿下のお手を煩わせるわけには参りませんので、そのようなことはこちらでしっかりと手続きを行います」
「遠慮しなくていいんだよ?君は私の婚約者候補なんだから」
だから嫌だって言ってるんだよ…!!
あともう決定事項なんでしょ!?この青王太子の中ではさ!!
断れないんでしょ!?知ってる!!
なんかもう今までの経験で!!なんとなくそうなんだろうなーって分かってたよ!!
分かりたくなかったよこんな事!!
「じゃあまたね、ローズ」
そして言いたい事だけ言って去って行くとか…!!
ホントに何なの!?
確かに面倒な手続きはしなくてよくなったし、毎回許可を取る必要もなくなった。
正直、そこに関してだけは感謝してもいいとは思うけど…!!
時折お城の図書館で青王太子に出くわすようになったのだけは、明らかに意図的過ぎて許せない…!!
私の静かで楽しい図書館ライフを返せえええぇぇ!!!!
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