第8話 魔法が使える世界だった…!!
忘れてましたよ…!!えぇもう、それは清々しいほど盛大に…!!
青王太子の動向に気を取られてる場合じゃなかった…!!
こんな素晴らしい事を忘れていたなんて、私は一体何をしていたというのか…!!
え?何を忘れていたのかって?
ここが…!!
魔法が使える世界だった…!!
ってことを…!!
いや、まぁ……むしろ忘れてて良かったのかもしれないけどね。
だって家庭教師に言われて初めて知ったんだもん。魔法を勉強できるのは十二歳になってからだって。
なんか、精神的にも肉体的にも魔力的にも安定していないから、あまり小さいうちからは教えられないんだってさ。
大昔に凄い量の魔力を持っていた子供が、不安定なせいで力を暴走させたことがあったらしくて。だからそれ以降、ある程度の知識をつけた年齢までは教えないってことにしたらしい。
うん、まぁ…確かにそういう事聞いちゃったら、大事だなーって思うんだけどさ。
でももっと早く習いたかったとも思うわけですよ…!!
だって知らなかったけど、我が家の蔵書の中にはたくさんの魔導書なんかもあるんだとか!!
それ聞いちゃったら読みたくなっちゃうじゃん!?魔法とか憧れじゃん!?ロマンじゃん!?
そこに男女の性別など関係ない!!
ちなみに私は空を飛んでみたい!!
飛行機とかじゃなくてさー。こう、自分の力だけで空飛ぶとか。
夢じゃん?そういうの。
前世では魔法学校とかの話が流行ったりしたよねー。なっつかしー。
でもさすがに箒に乗ってっていうのは、ちょーっと遠慮したいかなー。
「お嬢様は魔法に大変興味がおありなんですね」
「えぇ!今までの勉強の中で一番楽しいわ!」
あまりに前のめりすぎなくらい勉強熱心な私に、お城から派遣されている家庭教師は少しだけ苦笑気味にそう言うけれど。
今なら私、あなたがあの青王太子に余計なことを言ったのだって許せる!!
だからもっと色々教えて!!
「では先ほど学んだ、基本的な魔法学五元素を全て言えますか?」
「火、水、風、雷、地、ですよね?」
「はい。ですがそれ以外に魔法にはあと二つ、そのどれにも属さないものがあります」
「それは一体…?」
「光と闇です」
わぁお。なんてテンプレ。
前世のファンタジー的な思考で考えれば、当然すぎるくらい当然で。
「一見真逆にも思えるこの二つですが、基本的に出来ることの系統は同じです。すなわち、どちらも"癒し"に特化している」
「癒し……」
光は分かるけど、闇も癒しなんだ。
ほら、よくあるやつだと闇魔法って、悪い物っていうイメージがあるじゃん?人の心を操るだとか、そういう感じで。
でもどうやらこの世界では違うらしい。
「光魔法は、主に希望を与える癒しです。体の傷を治したり、病を完治させたりといったことが主な用途ですね。他にも目くらましなどにも使用できます」
光の魔法で目くらまし……。
古典的だけど、確かに効果は高そう。
「対して闇魔法は、その逆。心を落ち着かせたりという鎮静化の方面での癒しになります。見えない心の傷への癒しは、闇魔法でしか出来ない特別なものなのですよ」
「まるで太陽と月のようですわね」
「そうですね。昼と夜、太陽と月。そういう対比であり、決してどちらが上でも下でもない。対等な関係にある魔法なのです」
なるほどねー……。
ってことは、両方の魔法を使えたらものすごく人を癒せる凄い人になれるってことだよね?
……うわっ、我ながら頭の悪い解釈…。
でもまぁ、間違ってはいないんだろう。
個人的に気になるのは、それが植物に対してだったらどちらが有効なのかとかなんだけど。
ま、それも追々かな。
「また人にはそれぞれ、得手不得手というものが存在します。それは魔法でも同じ事。水系統の魔法が得意な人が、火系統の魔法が苦手だったり。場合によっては全く適性がない場合もあります」
「五元素全てに適性があっても、光や闇には適性が無かったりもするのかしら?」
「そうですね。むしろ光と闇に関しては、高い適性能力のある方は中々いらっしゃいませんから。使える程度、というのが一般的です」
一応全部使おうと思えば使えるのか。
って、そりゃそうか。覚えることは出来るんだもんね。基礎なんだから。
そこから自分の適性に合わせた魔法を重点的に覚えるっていうのが、たぶん一番効率的で一般的な方法なんだろう。
で、だ。
じゃあ私は、いったいどの魔法に適性があるのかっていう話なんだけど。
「その人それぞれだという適性は、どうやって知ることが出来るのかしら?」
大事なのはそこだ。
自分の得手不得手を最初から何らかの方法で知ることが出来るのなら、それに越したことはない。
「そのための魔導書があります。本日はそれをお持ちしましたので、お嬢様の適性魔法を確認いたしましょう」
やった…!!流石お城から派遣された家庭教師!!出来る女は違うわね!!
「しおりを挟んであるのが、この魔導書の真ん中のページです。見開きのページのそれぞれに手を置いていただければ、すぐに分かるようになっていますから。さぁ、やってみましょうか」
「はい!」
どういう仕組みなのかは分からないけど、今はそんな事どうでもよくて。
初めて見る魔導書に、そして自分の魔法の適性が分かるという事実に、ワクワクドキドキが止まらない。
若干どころじゃなく興奮しながら、私は家庭教師に言われた通り両手を開かれた本の上に置いたのだった。
―――ちょっとしたあとがき―――
五大元素にしようかと思ったのですが、それだと仏教的になってしまうので。
西洋風の世界観なのに基本元素の理論は仏教からって、ヨーロッパ感とは…(^^;)
そして土だと植物関係を含んでいることを想像しにくそうだったので、四大元素の土を地に変えた上で、雷を足しました。
雷=電気なので、割と最近の要素なんですよね……。
機械のない世界なので、別になくても良いのかもしれませんが…。人体すら微弱な電気信号を使って動かすのに、ないのも気持ち悪いなーと。
なので独立で一つ作って、さらに混乱を招かないように五大元素ではなく五元素としました。
魔法学五元素。名前の羅列だけ見るとものすごくかっこいいですね!(笑)
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