第14話
パーティー編14
シャルロットから想いを告白されたスウィンナートン侯爵はカイラードを呼び出し、結婚を認める旨を伝えた。
侯爵がちょっと涙目だったのは心のうちに秘めておくことにした。
急いで王宮に戻り、婚約に必要な書類をまとめた彼はその日のうちに正式に婚約を申し込み、侯爵家もそれを承認した。
「だから、何も憂う事はないんだ。すまない、てっきり侯爵が話すと思っていたから大丈夫だろうと思って何もいわなかったことで誤解を生んでしまったようだな。」
「そんな…………。」
ことの顛末を聞いたシャルロットは床に崩れ落ちた。
慌ててカイラードが支える。
「でも、わたくしはこんな騒ぎを起こしてしまって…………もう……。」
シャルロットは王家や侯爵家でももみ消すことができない騒ぎを起こすことが目的だったのだ。
「騒ぎ……とは、何のことだろうか。」
「えぇ。大変素敵なお話は聞かせていただきましたがそれだけです。」
ルーカスとアリシアの言葉にシャルロットは涙で濡れた顔をあげる。
「これからもお互い次期国王夫妻として懇意にさせてくださいね。」
その言葉にシャルロットの瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。
それを優しく拭うと、カイラードは彼女の耳元で小さく何事かを囁いた。
顔を真っ赤にした彼女は、「化粧直しをして参りますっ!」と慌てて会場を出て行った。
それを見守るカイラードの表情は柔らかく、今後の二人の未来は明るいと思われた。
戻ってきたシャルロットを迎えて婚約者として発表したカイラードの様子を見ながらルーカスはアリシアの耳元に唇を寄せた。
「ねぇアリシア……さっきはずいぶんと熱烈だったね?ふふっ、嬉しかったなぁ。」
その言葉で思い出したのだろう顔色を赤くしたり青くしたりしていたアリシアだったが、ひとしきりそれが住むとまっすぐな目でルーカスを見据えた。
「もうこの生誕祭が終わって国に帰ったら発表する手筈になっていたので誤差です。」
ツンと言い放った彼女に思わずルーカスは破顔した。
くすくすと笑うルーカスにアリシアはむぅと唇を尖らせる。
「だって…………ルーカスは私の婚約者だもん……。」
足元を見つめたままもしょもしょと呟いたアリシアだったが、ルーカスの反応がないことに不安を感じて顔を上げると、先ほどまで慈愛に満ちた微笑みを浮かべていたはずの彼の瞳はギラギラと輝き、それは完全に捕食者の目だった。
しまった、と思った時にはもう遅く、アリシアは今後のことを思って遠い目をしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます