第11話

パーティー編11

耐えきれなくなったのだろうか、シャルロットがその場にうずくまって耳を塞いでしまった。その様子を見たアリシアはシャルロットの元へ静かに歩み寄ると、優しく囁いた。



「でもね、人生そんな悪いことばっかりじゃないって思うの。……ねえ、あなたもそう思いませんか?」

「…………え……?」


アリシアに促されてシャルロットが顔を上げた先には、一人の男性が立っていた。燃えるような赤い髪が印象的な美丈夫。身にまとっている煌びやかな美しい衣装に負けない程の美形だ。



「カイ…………、何で……?」


シャルロットは彼を呆然と見上げていた。

カイと呼ばれた青年は、小さく微笑むと、優雅な身のこなしでシャルロットの側まで行き、彼女に手を差し伸べた。



「……驚きましたか?シャルロット様。…………いえ、シャルロット嬢。」

「え……。」

「初めまして。……この姿では、ですが。王太子のカイラードと申します。…………貴女の、婚約者です。」


その言葉にシャルロットの瞳からぶわりと大粒の涙がこぼれ落ちた。

そんな彼女に優しく微笑見かけると、とカイラードは宥めるように抱き締めたのだった。







シャルロット・スウィンナートン侯爵令嬢は恋をした。隣にいるだけで幸せになれるような……。


でも、それは許されざる恋だった。

相手は自分の護衛騎士だったのだ、身分の釣り合いが取れない。

でも彼女はどうしても彼と一緒になりたかった。

意を決した彼女は、父であるスウィンナートン侯爵に心の内を打ち明けた。

彼は小さな頃からシャルロットを可愛がってくれた。

味方をしてくれるかもしれない、と思った。

彼女の言葉に、侯爵は考えこんでしまった。


数日後、シャルロットにもたらされたのは、自身の婚約が決まったという知らせだった。

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