第6話
パーティー編6
今日の生誕祭の主役は同盟国の王子だった。
招待状がルーカスの元に届いたとき、アリシアは両親に勧められて共に参加することにした。
今までアリシアは国の重鎮の娘として知られてはいたが、次期王太子妃であるということは伝わっていない。それどころか、件の問題には箝口令が敷かれているため、国外にルーカスが婚約したということは伝わっていなかったのだ。
まだ婚約破棄して時間がたっていないのだ。すぐに婚約したとあっては外聞が悪いかもしれないとの配慮からである。
とりあえず『婚約者』同伴という表現では無く、『パートナー』同伴という言い回しでパーティーへ参加する旨を伝えたのだ。
ルーカスは不満げであったが、アリシアのためなら仕方ないと引き下がった。
さて実際パーティー会場に来てみると、この国に来るまでの船旅で潮風によって想定以上に悲惨な事になってしまっていた。
服はもとより着替えるつもりであったし、髪も到着してからセッティングする予定だったのだが、体や髪の毛が無惨なほどベタベタする。
湿度も相まって気持ち悪いのだ。
その上、アリシアは完全に船酔いしてしまっていた。
2人は軽くシャワーを浴びた後、提供された居室で休んでいた。
しかし、回復の兆しは見えたものの、開場に間に合いそうになかったアリシアは、体裁の為にもルーカスだけ先に行くように促した。
アリシアを案じて残していくのを渋ったものの、今日ここに来たのは国事行為である。王太子としての責務を果たさなければならないことはよく理解していた。
だが、お互いがお互いを心配したため、2人とも盗聴器を身につけたのだ。相手になにか異変があればすぐに気が付けるように、と。
アリシアはそれを使って会場内の重鎮の把握も進めていた。
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