第5話

パーティー編5

シャルロットに説明させようとそちらを見るも、悲しげな様子で他の令嬢たちに囲まれている。

どうやらこの令嬢の暴走では無く、シャルロットの差し金のようであった。



「何の話……」

「まぁ!このような場でシャルロット様を貶めるのですか!?」

「酷い……っ!酷いですわ、ルーカス様!私のことを大切にするって……」

「聞き捨てなりませんわね。」



周囲の令嬢たちにかばわれて泣きながらルーカスを責め始めたシャルロットだったが、凍てつくような声に遮られて固まった。

この場にその声の持ち主の姿は見えず、何故か頭上から声が聞こえてきた。

会場中の人々が声の主を探そうと視線をさ迷わせる。


コツン、コツンと小気味良いヒールの音が聞こえてきた。会場内に備え付けられている螺旋階段からだ。深いサファイア色のクリスタル素材の華奢なハイヒールに、階段の隙間から覗くドレスの裾は藤色。一歩踏み出すごとに軽やかなオーガンジーが翻る。


彼女が階段からホールに降り立つと、各方面から溜め息が沸き起こった。シャンデリアの光を受けて、サファイアとダイヤがあしらわれたティアラが煌めく。

滑るような滑らかさで彼女がルーカスの元へ歩み寄り、その腕をとる。

ルーカスもほっとしたような笑みを浮かべて彼女の腰を抱き寄せた。

彼女――――アリシアは、美しくも酷薄な笑みを浮かべてシャルロットに向き合った。



「…………誰と、誰が婚約……ですって?」


美しい笑顔から放たれた言葉は氷の刃のように冷たく鋭い。かのからはえも言われぬプレッシャーが全方位に振り撒かれていた。

もはやルーカスの本当のパートナーが誰であるかなど、誰の目からも一目瞭然だった。



「……わたくしが居ない間に随分と面白い事になっていますこと。」

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