第15話

ルーカス視点15

「そっか、それなら良いんだ。……実はさ、今僕が困ってることがあるんだけど、相談に乗ってくれる?あんまり外部の人に聞かせられるような内容ではなくてさ……。」

「?……はい、勿論です。あ、だから今日お茶しようって誘ってくださったんですね?」

「そうなんだ。断られるかとヒヤヒヤしたよ。」

「だってルーカス様ですもん。間違いなんて起こりえないし、それに、私の対面に気を使って二人きりにならないように配慮してくださったじゃないですか。」


『間違いなんて起こりえない』…………

全く意識されていないのか、僕は……。

思わぬ所でダメージを食らったルーカスは、何とか気を取り直して話を続ける。



「まずじゃあ、これを見てもらえるかい?」

「?……はい。」


首を傾げつつアリシアはルーカスから渡された資料に目を通す。最初は不思議そうに見ていた彼女だが、段々と表情が険しくなってくる。



「……ルーカス様、これって……。」


最後まで目を通したアリシアは思わず正面に座るルーカスに問いかける。


ルーカスが彼女に手渡した資料に書かれていたのは、王都にあるブティックの明細書だ。

その店は有名なデザイナーが手掛けるブランドで、全てオーダーメイドの品を取り扱う。一年先まで予約でいっぱいという人気ぶりだ。


そのため、取引内容が全てしっかりと記録されている。一般的にドレスは男性が女性に贈ることが殆どだ。夫が妻に。未婚女性なら、婚約者か父親から。誰が買ったのかさえ分かれば、誰の為のものなのか大体の予想はつく。


本来ならば顧客情報を他人に開示することなどないのだが、何せ相手は王太子だ。

『ある事件の捜査に必要である』

この一言でルーカスはかのブティックに情報を開示させることに成功した。彼の今までの功績と人徳が成し遂げた成果だ。

嘘は言っていない。王家と公爵家の威信に関わる大事件なのだから。


その明細書の名簿中に、オリバーの名前があった。

それも、ここ半年で一度や二度では済まない量の。


確か、そのブティックを開業するにあたり、マーシャル侯爵家が投資したはずだ。そのデザイナーは、マーシャル侯爵夫人のお気に入りだったのだ。

例え予約でいっぱいであろうとも、その息子であるオリバーなら予約をねじ込む事が可能だろう。


問題は、この半年、アリシアが一度も彼からドレスを贈られていないことにあった。

流石のルーカスも半信半疑であったのだが、彼女の反応を見る限り事実であるようだ。


送り先が知りたければ、ドレスを製作した時に測ったであろう相手女性のサイズを聞けば良いだろう。

報告にあったメアリーとアリシアではあらゆる所のサイズがちがうのだから、比べれば一発だ。


「……実は、見てほしい物はまだあるんだ。でも、その前に一つだけ確認させてほしい事がある。」

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