第14話

ルーカス視点14

それから丁度三日後。

もうすぐアリシアが王宮に到着する時間だ。

準備は出来ている。大したことでは無いのだ。要は、アリシアと二人きりになれれば良い。しかし、婚約してからと言うもの、アリシアは異性と二人きりになる事を避けてきていた。

それはルーカスに対しても例外では無く、必ず国王夫妻、または公爵夫妻のうちの誰かが一緒にいた。


今日は偶然アリシアの両親は、彼らの領地でえる公爵領に赴いており、彼女一人で王宮を訪れていた。

そこで、ルーカスは自分の両親にほんの少しだけアリシアと二人きりになりたいと頼み込んだのだ。

ロキを連れて行く為、完全に二人きりでは無いという彼に、国王夫妻は、誤解を招くことを防ぐために人目に着く中庭でなら許すという条件の元で折れた。


それならばと、ルーカスは二人で話し込んでいても不自然にならないようにお茶をする事にした。

丁度数日前、王宮には同盟国からの贈り物が沢山とどいていた。

その中には、この国では見られないような珍しいお茶菓子もあったはずだ。公爵家でも手に入れられないものなど無いだろうが、これは王室に献上されたものだ。一般に出回るものとは品質がちがうだろう。ここで使うにはうってつけであったのだ。

喜んでくれるだろうか?

話題はきっと重いものになってしまうだろうが、せめて少しでもアリシアの笑顔が見られたら良いな……。そんな一心でルーカスは準備を進めていた。








「いいえ、何も。突然どうなさったのですか?」


考えが甘かった。そう簡単にはアリシアから引き出せそうもない。

これはアリシアが訪れた後、ロキが入れたお茶と共に例のお茶菓子を食べ、(お菓子を口に入れたあとのアリシアの笑顔は本当に可愛かった。しっかり心の中のアルバムにしまい込んでおいた。)しばらくの間雑談をしたあと、ルーカスが最近何か困った事は無いかとアリシアに問いかけた事に対する返答だ。


小首を傾げ、キョトンとした様子の彼女は本当に心当たりがないかのように思える。その様子は、流石のルーカスでさえも確信がなければ『そっか〜』と流してしまいそうな程に見事なものだった。

確たる証拠を持って、更に自分が完全に彼女の味方である事を納得してもらわなければ話は一切始まらないだろう。


本当は暫く彼女が気づいている段階を探ってから出し集ったものだが致し方ない。ここで引き下がる訳には行かない。


ルーカスが視線を向けると、心得たとばかりにロキから一束の書類が渡される。

それを受け取ると、ルーカスは再び正面に座っているアリシアに向き直った。

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