第13話
ルーカス視点13
だが、この事実をどう利用しようか。
直接アリシアに伝える訳にもいかない。きっと、責任感の強い彼女のことだ。家の為に、自分の心のなかに仕舞ってしまうだろう。
いや、彼女はそもそも気づいていなかったのだろうか?あの賢くて聡い彼女が?
きっとそんな訳が無い。それなのに黙っていたのだろう。
それならば、何とかしてアリシア本人が婚約を白紙に戻すように仕向けることは出来ないだろうか?
きっと誰かが助言しない限り彼女は動かない。
筆頭公爵家であるツェローラ公爵家の一人娘の婚約が白紙になったとなれば、国内に大波乱が起こる。
ただでさえ、ルーカスの婚約が決まらないために貴族の婚約が遅れているのだ。そんな中結ばれている婚約も、ツェローラ公爵家の入婿の座が空いたとなれば、考え直す家も出てくるかもしれない。
無闇に引っ掻き回して混乱を招くような真似を彼女が望むとは思えない。
しかし、だからといってアリシアが自分を犠牲にする必要などないのではないだろうか?
悪いのはオリバーとメアリー。
その二人の身勝手な行動の責任を彼女が取る必要なと無いのではないか?
とはいえ、国内で彼女に意見する事が出来るほどの身分がある者は限られている。その人達に今回の事実を知られることはアリシアは望まないだろう。
それに何より、二人に忠告を聞き入れられてしまっては困るのだ。ルーカスがアリシアを奪い取る算段がつかなくなる。何とか大事にして、信頼を回復出来ないところまで突き落としてしまいたい。
国を統べるものとは思えないような思考がルーカスを襲う。しかし、そんな考えをおくびにも出さず、傍目からは無表情に見えていることだろう。
生憎とその場にいたロキは、主が何を考えているのか大体の事は理解して居そうだが。
しばらく無言のまま考え込んでいたルーカスだったが、ある考えが浮かんだ。それとなくアリシアを誘導して彼女からルーカスに相談するように仕向けてしまえば良いのだ。それを決行するためのうってつけの舞台もある。
それまでに準備をしておこう。
決行は三日後――アリシアが王宮を訪れる日だ。
何かが主がの中で決定したようだと察すると、ロキは素早く報告書の束を纏めてルーカスの目の前から避け、ルーカスの次の動きの為の指示を待った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます