第11話

ルーカス視点11

ロキがオリバーの監視に付けられてからも、彼は別段変な動きをする事は無かった。

学園に通いながら、同時に公爵家にも通い、次期公爵補佐としての勉強や訓練をこなす日々。


ルーカスもメアリーからのアタック(物理的な)を回避しつつ、残りの学園生活にいそしんだ。

特段大きな事件も無く、ルーカスは学園を卒業した。まぁ、アリシア達の入学式の時と同じく、場違いに露出度の極めて高いドレスを身にまとったメアリーに『きゃあ、ごめんなさぁい』というセリフと共に飲み物をぶっかけられかけはしたが。


後々のロキによると、あれはぶっかけてしまった申し訳なさを装ってボディタッチに持ち込み、あわよくば後日にお詫びと称したデートを取り付けようとの狙いがあるとの事。

避ける事が出来て良かった。

全く恐ろしい事だ。

執念が怖い。


そんなこんなで卒業した後のルーカスは、王太子として、王位を継ぐ為の準備を本格的に進めていた。

しかしそれでも、ロキをオリバーの監視から外すことはしなかった。


それが幸をそうしたのは、ルーカスが卒業した半年後の事だった。



その日、ルーカスは自室で執務をこなしていた。

もうすぐ正午。ロキからの報告が上がってくる頃だ。ルーカスは執務にひと段落をつけ、お茶を飲みながらロキが来るのを待つことにした。


数分の後、部屋の扉を叩く音がした。ロキが報告の為に帰ってきたのだろう。短く部屋の中から入室の許可を出すと、入ってきたロキはどこか気がせいているように見える。

いつもならルーカスの前まで来て報告書を上げていくだけの彼は、扉の前で礼をしたまま動こうとはしない。


彼の様子からなにかを感じ取ったルーカスは、急いで人払いをし、ロキと二人だけになる。


そこでやっとにやりと笑った彼は、ルーカスの前に歩み寄ってきた。手に持った報告書をルーカスの顔の前でヒラヒラとさせる。そうして一言。



「動きがありました。」

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