第10話

ルーカス視点10

メアリーに引き続き、オリバーの監視を任された彼の名前はロキ。ルーカスが表立って動けないような後暗い仕事を担当している。


何故そんな事になったのか。

それはルーカスが13歳の時に怒ったクーデター未遂に遡る。

表立って発表されたのは禁止薬物の輸入。

しかし、謀反を企てた貴族が取り扱っていたのは薬物だけでは無かった。様々なものがあったが、その中でもとりわけ目立ったのは奴隷の売買。


外国人やスラムの住人の子供達をさらい、売り飛ばしていたのだ。流石にこれは国や、関係ない貴族への国民の反発や非難を恐れて、罪状としては公開されず、秘密裏に処理された。


無事に家に帰ることが出来た子供も居たが殆どはそうでは無かった。スラム出身の子供等特にそうだ。今日食べるものにも困るような環境で、命の保証等ありはしない。売買された中には、親が既に亡い、天涯孤独の子供などざらにいた。


国は、何とかその子供達に仕事を斡旋した。

しかし、怯えるばかりだった子供達の中に一人、声も上げず、限りなく冷静に自分の置かれた状況を分析し、上手く立ち回ろうと幼いながらに頑張る子供が居た。名前はロキ。年齢は、当時のルーカスより一つか二つ下くらいか。

彼に興味を持ったルーカスは、自分の直属の部下にならないかと持ちかけてみた。

スラム出身の者を表だって重要な役職には付けられないが、国の影の部分を知っている彼のような存在は、今後ルーカスが王として君臨するのに役立つであろう。

そんな打算の元での行動であった。


国から斡旋された仕事でも、食いつなぐには困らないだろう。今までの様な不当な扱いは受けないに違いない。それでも、スラム出身の子供など昇進することもなければ、のし上がる事など夢のまた夢。

そんな彼にとって、ルーカスの提案には、乗ってみるだけの価値が十二分にあったのだ。


少年は迷わずルーカスの手を取った。

そうして、国にでは無く、ルーカス個人に永遠の忠誠を誓ったのであった。

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