第7話
ルーカス視点7
更に時は過ぎ、三年後。
今日はアリシアの入学式だ。
貴族の子弟なら、そのほとんどが入学し、上位貴族、下位貴族と校舎が別れているとはいえ、クラス分けの為の試験というものが存在する。
ルーカスが予想した通り、アリシアは難なく入学試験をトップで通過し、新入生代表に選ばれていた。
制服が存在しないこの学園の入学式では、夕方から入学式が執り行われる為、それぞれの家が主役の新入生である我が子の為に派手になりすぎないながらも、腕によりをかけたドレスや燕尾服を作らせ、朝一から長時間かけて準備する。
アリシアは、彼女の生来の美しさを際立たせるような装いをしていた。
紫がかったブロンドの髪がよく映える、暗めの紺色から裾に向かって淡い色に変化するマーメイドラインのドレス。丁度、式が開かれる夕方から夜にかけての空を思わせる色のそのドレスには、細かいビジューが縫い付けられており、彼女が歩く度に裾が揺れると、布全体がつややかに輝くように見えて、大人しめな色ながらも、周囲の視線を自然と惹き付ける。
隣には婚約者であるマーシャル侯爵令息が居た。
兄とよく似た、理知的な瞳をした少年だ。
二人の雰囲気は穏やかで、その様子から、婚約者同士としての関係は上手くいっていることが伺える。
アリシアが幸せそうならそれでいいのだ。
自分の出る幕ではない。
そうは思いながらも何となく面白くなくて二人の様子を見ていられず、視線を会場全体へと向ける。
ざっと見回していると、一人の少女がルーカスの目に止まった。
いや、目に付いたという方が正しいか。
その少女は、サラサラとしたピンクブロンドの髪を肩上で切りそろえ、緩く巻いている。ぱっちりとした金色の瞳が印象的な可愛らしい見た目だ。
しかし、その格好がいただけない。
ふわりと広がる淡いピンクの膝上迄しかないショートドレス。胸元と背中はざっくりと大きく開き、まだ成熟しきっていない肢体を見せつけるようなデザインだ。惜しげも無く晒された脚には踵の高い派手なピンク色の靴。
全体的にどこかアンバランスで場に浮いていた。
思わず見つめてしまっていたルーカスの視線に気が付いたその少女と目が合ってしまい、気まずくなったルーカスは彼女からぱっと目を逸らしたのだった。
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