第4話
ルーカス視点4
「入れ。」
ノックをして少しの沈黙の後、国王の声と共に扉が開かれる。ルーカスを部屋に招き入れたのは大臣の一人であった。やはりまだ執務の最中であったようだ。
ルーカスの姿をみとめると、国王は何かを感じ取ったのか、人払いを命じた。
侍女がお茶と茶菓子を運んで来たのを最後に、沈黙が部屋を覆う。静かな部屋には茶器が当たる音がよく響いた。
「お前から連絡も無しにこの部屋に来るなんて珍しいな。何かあったのか?」
沈黙を破ったのは国王だった。
私的な空間と化したそこには、王ではなく、父親の顔をした国王が居た。
そんな彼の様子に背中を押されたルーカスは、カップをソーサーに戻し、姿勢を正すと、意を決したルーカスは口を開いた。
「先日の件ですが、欲しいものができました。」
「そうか。……言ってみろ。」
「……時間が欲しいです。」
「時間?どういう事だ?」
「私はどうしてもアリシアの事が諦め切れません。ですが、きっとこのままだと今年中に私の婚約者が決まってしまうでしょう?それが王族としての務めですから。……ですがせめて、心を整理する時間が欲しいのです。ずっとなどということは申しません。彼女が結婚するまで。どんな手を使っても私の手に届かなくなるまで、諦める為の時間が欲しいのです。」
貴族女性の結婚は一般的に学園を卒業する16〜17歳から1、2年で結婚する事が多い。アリシアの場合は既に婚約者が決定している為、遅く見積もっても卒業後1年以内には結婚するだろう。
その頃、ルーカスは20歳。
相手が王妃教育を受けなければならない王太子は、婚約は早くとも結婚するのは比較的ゆっくりな傾向がある。国を上げての行事だ。諸々準備する事も多くなる。結婚年齢として20は別に遅くは無い。そこから2、3年と考えても、事前に王家側の準備を進めておき、婚約後急ピッチで結婚すればなんとかならないこともない。
ルーカスは自分に許されるぎりぎりの時間を見事に突いてきたのだ。
国王は彼の言葉に唸るしか無かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます