第13話

映像の端に映りこんだメアリーは、場に不釣り合いな程キラキラしい装い出会った。

豪奢なフリルをふんだんに用いた花を思わせるようなピンクのドレスは足元が透け、大ぶりでカラフルな宝石があしらわれた豪華な首飾りに同じく大ぶりな宝石のついた腕飾り。裾から覗く靴は華奢なデザインだが、足首には不似合いな色合いのアンクレットが幾つもついている。

端的に言えばセンスがすこぶる悪い。きっと彼女の持ち物の中で値段の高い物や気に入っているものを組み合わせを考えずに身につけているのだろう。学園のパーティーの趣旨にも合っているとは思えない。

画面の中に映っている他の令嬢達のシンプルながらも洗練された装いとはかけ離れたものであった。

そんな画面の中のメアリーは、アリシアたちの姿を認めると、そちらに吸い寄せられるように画面中央に向かって歩いてきた。

挨拶でもしに来たのかと周りの令嬢達が小さな声で話していると、突然アリシアの目の前でメアリーが派手に転んだ。

運の悪い事にそこは噴水の目の前で。

彼女はバランスを崩したまま、勢いよく噴水の中に落ちたのだ。

流石にこれには皆驚き、慌てて駆け寄って助けようと手を差し出すと、メアリーはアリシアを睨み付けながらこう言い出した。



「何するんですか!足を引っ掛けて転ばせるなんて!怪我をしたらどうするんですか!?それに、こんなんじゃ、せっかくのドレスが台無しだわ……!パーティーに出られないじゃないの!」


そう吐き捨てると、メアリーは差し出された手を振り払って一目散に駆け出した。

流石のアリシアもこれには驚いて固まってしまっている。

時が止まったようになっていた映像が突如震えながら動き出した。時折堪えきれない笑い声が録音されている。



『ぶっ……くくっ……ふ……いやぁ、……ふふっ……想像以上だね、……ぶふっ……話には聞いてたけどキョーレツだなぁ……くくくっ』


画面が動いたのは、ルーカスが堪えきれない笑いに震えながらアリシア達の方に向かってあるいてきたからであった。

アリシアは固まった状態のまま、首だけでルーカスの方を向き、



『……あれはどういう事でしょう……?』


精一杯絞り出せたのはそれだけだった。怒涛のながれへのあまりの衝撃に頭がついて行っていないのだ。



『うん。あれ、自作自演だよね。多分あのままマーシャル侯爵令息の所に泣きつきに行くと思うよ。転ばされたーって。』


笑いを噛み殺しながらルーカスが告げたのはそんな言葉だった。

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