第14話

そんなルーカスの言葉を最後に映像は途切れた。

痛いほどの静寂がホールを包み込む。

そんな空気を破ったのはやはりルーカスであった。



「これで分かったよね?マーシャル侯爵令息。貴方の愛しの彼女は大嘘つきだったんだよ。」

「…………メアリー、あの日泣きながら転ばされたと言っていたのはこれの事か……?いや、服装が同じだったな。そうか。……そうか。」


自分の過去の記憶と繋がったのだろう。辛うじて絞り出された声は酷く掠れたものだった。

アリシアがふとメアリーの方を見ると、彼女は舌打ちを1つした後、一切の温度を感じさせない表情でオリバーを見つめていた。もはや取り繕うつもりもないのか、オリバーにも愛嬌を見せる様子もない。

そこでアリシアはずっと気になっていた事を聞いてみることにした。



「何故マーシャル侯爵令息と?彼に婚約者がいる事は知っていたはずです。彼のことを好きになったのかとずっと思っていましたが、今のその様子では違うようですね。」

「はっ、お金の為に決まってんでしょ。」


心底不思議そうに問うたアリシアに、メアリーは吐き捨てるようにそう即答した。



「貴族の中でもトップクラスにお金がある上次期公爵だっていうから落としたのに……どっちもあんたの家からの施しだったなんてとんだ誤算だわ!」

「……では、お金の為だけにこんな失敗したらただでは済まないようなリスクを冒したと……?」


メアリーの物言いにとうとう崩れ落ちてしまったオリバーを尻目にアリシアは問い質す。

開き直ったメアリーは小馬鹿にしたように続ける。



「あんたみたいな大貴族のお嬢様にはあたしの気持ちなんて分かんないでしょうね。どうせもうバレたんだから国外追放でもなんでもすればいいわ。さっさとしなさいよ。」


メアリーの物言いにそれを向けられたアリシアだけでなく、周囲の面々も唖然とするばかりだ。

いち早く立ち直ったルーカスがメアリーに歩み寄り、吐き捨てるように告げた。



「分かるわけないし、分かる必要もないよね、人の男とるような非常識な女の気持ちなんて。……それよりも、国外追放って言った?何で近隣国にこんなゴミ押し付けなきゃなんないの?迷惑でしょ。……って言うかさ、何で命が助かる前提で話してるの?」

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