第3話

まずは大前提としての誤解を解かなければ。勘違いされると後々面倒だ。とはいってもこの2人に理解してもらう必要はない。どうせ話が通じないのだから。味方に付けるべきは聴衆。学園に通っていた者達は大体の事情は把握済みでこちらに同情してくれている。

――あぁ、またあの頭のおかしな2人に絡まれて可哀想に――

といったところだろうか。


しかし、今日のパーティーには生徒達の親や王族等の要人も来ている。少しでも疑惑を残すと、これからの社交界でも遺恨を残す事になる。こんなことで自分が被害を受けるなどごめん蒙りたい。全くもって傍迷惑な話だ。



「まず、何か勘違いされているようだけれど、私はオリバー様の事などこれっぽっちも好きじゃないわ。」


……何か変な事を言っただろうか?向かいにいるオリバーの目が点になっている。……いえ、周りの反応を見る限り大丈夫ね。私の友人方も当然だろうというような顔をしている。続けて大丈夫そうだ。



「それに、」

「そっ……そんな訳ないじゃない!」


私の声を遮るように、再び金切り声が耳を劈く。そろそろ鬱陶しい。



「少しお黙りになって。今は私が話している最中ですのよ。……続けますわ。私がいじめをしたとか?どこからそのようなでまかせが浮上したのか。侮辱も甚だしいですわ。」

「嘘よ!私、アリシアさんに持ち物を隠されたり、壊されたり、集団で悪口を言われたり……それに、ドレスを汚されたりもしたわ!ねぇ、信じてくれるでしょ?オリバー様……。」

「ああ、勿論だとも!この僕が君を疑うなんて事あるわけないじゃないか!あぁ、かわいい顔をこんなに涙で濡らして……可哀想なメアリー」


……一体、自分たちは何を見せられているのだろうか。そんな共通認識がホールを包み込む。アリシアがふと2人から視線を外すと、同情するような生暖かい視線といくつもぶつかる。


それよりも先程から気になっていることがある。その場で追求することもできるが、それには録画か録音など記録があった方が都合が良かった。

――失敗したわ。ちょっとめんどくさくなるかしら――

そんなことを考えながら友人方の方を向くと、そんな心配は一瞬で吹き飛んだ。その中の一人が映像石を使って一部始終を記録していたのだ。

視線に気付いた彼女は微笑み、小さく親指を立てる。


――ナイスだわ!流石私の友人!――


アリシアは、これを使ってさらに2人を追い詰めて行くことに決めた。

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