第2話

「婚約破棄……ですか。別に構いませんがオリバー様、理由をお聞きしても?」

「理由って、さっきあたしが説明したじゃないですか!貴女が私をいじめたからよ!」


オリバーに面と向かい、問いかけると、キンキンと耳鳴りのしそうな勢いでメアリーが喚き始める。と、彼女を庇うようにオリバーが1歩前に出る。



「君はまたそうやってメアリーを邪険にして……」

「何を仰っているのか分かりかねます。メアリーさんとはどなたのことでしょう?」

「んなっ……!オリバー様!またアリシア様がいじわる言って来るの……怖いわ!」

「アリシア!本当に君は底意地が悪い。気に入らないからっていたいけな少女を無視するなんて神経を疑うね。それでも本当に君は貴族の令嬢なのか!」

「オリバー様……♡」


……いったい私は何の茶番を見せられているのか。目の前の馬鹿げた桃色空間にほとほと嫌気がさす。

ここが公共の場だというのを忘れているのではないだろうか。

ホールに流れていた心地の良い音樂も止み、会場中からちらちらと伺うような視線を感じる。

せめてもの救いは、それがこちらに好意的であるものが多い事か。



「底意地が悪い……ですか。何を仰っているのですか。そちらこそ貴族としての自覚を持っていらっしゃらないのでは?身分が下の者が上の者に話しかける事が禁じられていることなど子供でも分かります。」

「っ……それは……。だが、メアリーの事を知らない訳が無いだろう!同じ学園で学んだ友人だろう!」

「はぁ……何を仰るのかと思えば。私はその方から挨拶をされたことはありません。この学園では伯爵家以上の上級貴族の通う校舎と子爵家以下の下級貴族の通う校舎は別れているのですから知らないのは当然では?」


もちろん知らないなんて言うのは嘘である。あれだけ四六時中べったりくっついていたのだ。嫌でも目に入る。だが、自分達の非常識さを分かって貰わなくては困る。だから懇切丁寧に説明してあげたのだが。



「そんなのひどいわ!身分が低いからって馬鹿にして!オリバー様があたしの事を好きだからって嫉妬してるんでしょ!」


全く伝わっていなかった。

私怒ってるんだから!とでも言うかのように頬をぷくっと膨らませてぷるぷるしている。そんな彼女をだらしない顔で見つめているオリバーを見ていると力が抜けてくる。

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