第632話
「クソ!まだ仲間がいたのか!」ドンと結界を殴ったアーサー。
「私達の方が捉えられるなんて・・・魔力が完全に戻るまで、回復薬を飲んでも一時間以上かかるわ!」慌ててカバンを漁るソフィア。
「大変!!」「うぅ・・・」「もう・・・見ていられないですわ」ナナ達も焦る。
木々の隙間から姉の元へとサキュバス姉妹が戻ってきた。
「お姉ちゃん、上手くいったわ!」「やったよ~!そっちはどう?」
「よくやったわ!こっちはこの通り、もう私の虜よ」
ヨダレを垂らさんばかりのスケベ顔で、一番上の姉のサキュバスの体を見続けるドモン。
そんなドモンの顎をクイッと持ち上げた姉。
「逃げて!早く!!」「やめてぇ!お願いですぅ!」「もう・・・おしまいですわ」
「いくら叫んだって無駄だよ。こいつはもう私しか見えちゃいないんだから。あんたがこの人の大事な人だろう?私はそんな女の目の前で、大事な旦那を奪うのが大好きでねぇ。憎しみと恨みと失望の眼差しで睨まれると、どうにも興奮してし・・・」
「逃げなさいってば!!あ・ん・た・がっ!!!」姉の言葉を途中でナナが遮った。
「フフ何を言ってるのさ。ほら、今からあんたの大事な人が奪われるところを、じっくりと見ていなさい。この男も頭では抵抗しているだろうけど、私の魅力には逆らウベロレロレロレロレロ?!!」「お姉ちゃん?!」
「だから逃げろっていったのよ!あんた達、もうどうなっても知らないからね!」
全てを諦め、その場に座り込むナナ。そしてサンとシンシア。
一体この人達は何を言ってるのだろうと驚く勇者パーティー。それはもちろんサキュバス達も同じ。
「私は別にはじめからそれが目的・・・ちょ、ちょっとそこは流石に他に人がいない場所にしてちょうだ・・・精は奪うけど別に見せつけたいわけじゃ・・・ねぇ少し落ち着いて。お前の奥さんも見てるのよ?」
「イヒヒヒヒ!脱がしやす服だこと!」
「イヤァ!!」「何するのよ!」「お姉ちゃんを離して!!」
「離すわけがないだろ。まあ見てな。今からお前らも同じ目に合うんだからよ。イーッヒッヒッヒ!」
淫魔対悪魔。ナナ達にはこうなることは目に見えていた。
ドモンが常々『もし淫魔と出会ったら』の話をしていたからだ。
淫魔なんだから多少の無茶も出来るだろうと、ナナ達が頭を抱えるほどの妄想話をしており、三人は絶対にドモンに淫魔は会わせない、もしくはその淫魔をなんとか救ってあげようと話していたのだ。
脱がせた服を利用して、器用に姉を縛り上げたドモン。
逃げる間もなく姉妹も緊縛拘束された。酷く恥ずかしい格好で・・・。
「見るな!触るなぁ!くっ!なぜ身体がこんなにも反応する?!ひっ??」
「縛られた被虐心と見られている羞恥心、オスに命を握られている事に対する恐怖心と、ある種の愉悦感。お前のメスの本能が勝手に反応してんだよ。そのオスのものになれる喜びにな」ドモンはニヤリ。
「誰がお前のものなんかに!!」
「口でいくら言おうと、これからお前は嫌と言うほどそれを味わうことになる。2倍3倍と膨らんでゆく快楽に過敏に体は反応し、みんなの前に生き恥をかきながら、女としての尊厳をすべて失うんだ。溢れんばかりの幸福感の中でな」
今まで一方的に男を襲っていたサキュバスが、初めて男に襲われる。
それだけでも頭がおかしくなりそうだというのに、あとはドモンの言う通り、メスの本能が目覚めてしまっていたのだ。
縛られ手も出せないというのに、今は目の前にいる憎らしい男を抱きしめたい気持ちで一杯。
心の中で繰り返される『ありがとう』という感謝の気持ち。
そしてドモンはドモンで、半分はいつものでまかせ、半分はお得意の思い込ませる話術でサキュバスの感情を更に操る。
もし普通の女性に同じ事を行えば、脳が破壊され理性を失い、性欲を抑えることが出来なくなる可能性もある。
サキュバスの姉は止むことのない快楽の波に飲まれ、そして溺れた。
「こ、殺してぇ・・・あんたの手で・・・もういっそのこと・・・」
「こうしてか?」
「ぐぅぅぅ!!おかじぐなるぅぅぅ!!」
軽く首を絞める真似事。だがそれにも体は反応してしまう。
姉はみんなの前でおもらしをし、鼻水を両方の穴からぶら下げながら嘔吐した。
それはとても醜い顔で、ドモン以外の全員が顔を背けた。
「ウッウッ・・・お姉ちゃん・・・仲間達を救おうとしていただけなのに」
「人間なんてみんな同じ!私達も悪いけど、人間はもっと悪い!!」
涙ながらに何かを訴えた姉妹。
それが耳に入り、ピクッと反応したドモンと、眉間にシワを寄せたアーサー。
「その人はただの人間じゃないの。私達が助けるから、この結界を解いてちょうだい?」結界内でなるべくそばに寄り、姉妹に語りかけるナナ。
「イヤッ!人間なんて信じられない!」「知っているわ!この人、異世界人なんでしょ?たくさんのお金を持ってるって聞いた!そのお金で奴隷商から仲間達を救い出そうって!ウゥゥ・・・」
「そういうことだったのか」
多少その噂を聞いていたアーサーもようやく納得した。
本来サキュバスはこんな無茶なことはしないのだ。ましてや勇者パーティーがそばにいるというのに。
結界は厄介だが、何度か男が果ててその欲望が無くなれば、自然と結界は消える。ドモンの欲望の大きさだけが異常なだけ。
そんなサキュバス達は、他の魔物よりも早く人間との共存を選んだ。本気の愛を育みながら。
しかしその結果、サキュバス達は人間に裏切られ、皆奴隷として売られた。
助けに行った者も捕まり、同じ道を辿る。人間の都合の良い性欲の捌け口の奴隷人形として。
「俺達もそれなりに大金はたいて買ったもんでな。まあ金貨百枚も持ってくりゃ、ひとりくらい解放してやる」
ある奴隷商からはそう聞いた。だからサキュバス達は大金が必要だった。
そうして異世界人であるドモンの存在を突き止めたのだ。
「ふぅん、なるほどね。ま、確かに悪い事に慣れた様子じゃなかったもんな。でもあいにくだけど、俺はそんなお金なんてないぞ」
「嘘!あなたが大きな建物を建てたり、色んな物を発明したりしてるのを知ってるわ!」「それに三人も娶って、その内ひとりがどこかの国の王女なんでしょ?お金がないはずない!」
「本当にないってば。それに俺は異世界人ではあるけど、人間じゃなく悪魔なんだ。お前らと一緒のな。同じ仲間としてお願いだけど、あいつらの結界消してやってくれない?」
「それはダメ!」「絶対私達が酷い目に合わされるもの!」
ドモンに説得されても、頑なに断るサキュバス姉妹。
だがそれを責めることは誰も出来ない。それはそうだろうとしか思えなかったからだ。
イジメられ続けていた者が、勇気を振り絞り立ち向かった。
きっと怖くて怖くて仕方なかったのだろう。失神している姉を必ず守り切るという意志も感じられた。
この様子だと、恐らく金目になる物を渡したところで、素直に皆を解放することはないだろう。
それでありがとう、ではさようならなんてことはあり得ないと思うのが普通の考え。
「じゃあこうするしかないな。金はないけど金目になる物なら持っている。ある試練に耐えられたならそれをやるし、結界もこのままで逃げればいい」
「・・・・」「信用できない・・・」
「信用するかしないかは知ったこっちゃない。俺を嵌めようとしたんだから、それなりの報いは受けてもらうつもりだ。ま、殺すようなことはしないしさせるつもりもない。ただし試練に耐えられなければ、全てが無になるとだけ思っときゃいいよ」
ドモンはそう言い残し、車の中へ消えた。
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