第630話
「どうして下着を穿いてらっしゃらなかったのですの?」とシンシア。
「どうせなら風呂の後でいいと思っちまってて・・・面目ない」ミレイは平謝りするしかない。
「あれほどの勢いで放尿される方は見たことがありませんの。まるでオイルエステでのサ・・・なんでもありませんわ」
「身も蓋も無い言い草だな、お姫様は」
ミレイに遠慮はしないが、サンには気を使うシンシア。
そんなサンもドモンに付き添われて車の中で着替え中。流石に今ひとりで車には行けなかった。
ナナは勇者パーティーと一緒に、新たな場所で焚き火の準備中。風呂上がりにみんなで一杯やるためだ。
様々なハプニングはあったが、そのお陰もあって全員の親密度が一気に上昇した。
きっかけや経緯はくだらないことかもしれないが、冒険をする上では命を預ける場合もあるのだから、信じられる仲間がいることは非常に重要。
ドモンは集団行動が苦手だけれども、修学旅行のような類は実は大切だとも考えている。
見聞を広めることなどはどうでもいいが、仲間意識を高め、将来語り合える共通の思い出を増やすというのは良い事だ。
いつかそれが酒の肴にもなるだろう。
ちなみにドモンは修学旅行中、某ネズミの国ではしゃぎすぎて、持病の心臓発作を起こして倒れたことが思い出となっている。
「ソフィア、さっきサンが小便漏らして汚した下着洗ってただろ?もう乾いているか?替えはあるんだけど、どうせまた汚すだろうからってそれがいいんだって」「もう御主人様!」戻ってきたドモンとサン。
「風魔法もかけたけど、まだ乾いていないわ。でもこの後お風呂にも入るのだから、サンはそれまで我慢してね?私達しかいないし、少しくらい下着がなくても平気ね?」「は、はい」ソフィアは水魔法で食器洗い中。
皆すっかり打ち解けた雰囲気で、遠慮もかなり無くなった。
向こうではミレイが「ホントデカいよなぁ」と、ナナの胸を持ち上げている。
風呂のお湯が適温になったところで、見張りであるソフィアを抜いた女性達から入浴スタート・・・のはずだった。
「そういや髪の毛を洗っている時にふと顔を上げると、鏡に自分以外の顔が見えた気がして慌てて振り向くんだけど、後ろ確かめても誰もいなくて、ホッとして前を向いた瞬間目の前に幽霊が立ってた・・・なんて話もあるよな」
「・・・」「・・・」「・・・」「・・・」「・・・」
ドモンのお陰で、女性達が入浴する様子を見守っても良いという権利が得られた。
ただし50メートル以上は離れなければならないけれども。
「いやぁドモンさん、怪談ってのはいいものだねぇハハハ」アーサーもニッコリ。
「いいのか?俺からもソフィアのおっぱいが見え・・・ないなギリギリ。クソ」
「歳じゃのう・・ワシからも見えんわい!」
「目が良くて良かったなぁ。おぉ、ナナさんが凄いのは知っていたけど、姫様もなかなか・・・サンちゃんはすべり台ではしゃいじゃって脚が・・・綺麗なツルツルピカピカの一本筋だ」
「おいやめろスケベ勇者!クソ!」
ひとりだけ何かがものすごく元気な勇者アーサー。
ドモンはスマホを出してカメラで拡大するも、湯気と暗さもあってよく見えなかった。
「そ、そうだ。確かケーコが双眼鏡を買ってたはず。ちょっと持ってくるわ!」
「ん?その双眼鏡というのはなんじゃ?」
「ジジィでもきっと見えるぞ!任せろ、ソフィアのおっぱい絶対に一緒に拝んでやろうぜ」
車の方までテクテクと早足で歩くドモン。膝が悪くて走れないのがもどかしい。
みんなが風呂に入ってる間に、双眼鏡を持って戻らなければならない。
その時、勇者アーサーは油断していた。
女性達が風呂に入るのを覗いていて、結界魔法がすでに切れていることに気が付かなかったのだ。
ほとんどの種族の魔物達と人間が和解していることと、一度結界魔法をかければ獣もしばらく寄ってこないという事実に、警戒心も薄れてしまっていた。
双眼鏡をふたつ持って車から出てきたドモンの目の前に、二十歳くらいの姉妹が飛び出してきた。
服はボロボロで体は泥だらけ。ふたりハァハァと肩で息をしながら、ドモンにすがりつく。
ドモンも思わず驚いたが、不謹慎ながら破れた服の隙間から見えた胸の谷間や、男心をくすぐる女の甘い、いや、メスの匂いに頭と胸を貫かれてしまった。
「こんな所へこんな時間にどうしたんだ?お前達は」とりあえず平静を装うドモン。
「た、助けてください!」「姉が!姉が野犬に襲われてるのです!」
「え、野犬?それじゃ俺なんかより向こうにいる勇者に頼んだ方がいいな。俺じゃ勝てないし」
「い、いやあの、野犬と言ってもとても小さくて、ドモ・・・貴方様でもすぐに追い払えるかと」「そうそう!とても可愛い子犬なんです!」
「???」
この姉妹が何を言いたいのか、ドモンにはさっぱりわからない。
とにかく頭の中でこの姉妹と貴重なソフィアの裸を天秤にかけた結果、ソフィアの方に天秤は傾いた。
「なんだか悪いけど俺も取込み中なんだ。そんな可愛い子犬ならお前達でも追い払えるだろ?俺は今すぐソフィアのおっぱいを拝まなきゃならないからな」
「ま、待ってください!姉は、姉はとにかくすごいんですから!」「そうそう!ナ・・・貴方様の奥様よりも大きな胸で、お尻もとても大きいの!しかも普段から下着姿のような格好で出歩いてるんだから!」
「今は下着姿よりも裸の方が大事だ。悪いな。じゃ」
「裸でした!子猫に襲われて、服もほとんど破けていた気が!」「そうそう!脚もぱっくり開いて、子猫達にペロペロされていました!え?子猫??」
「・・・・」
罠に嵌めようとしてるのか、明らかに嘘をついている姉妹をドモンは軽くあしらおうとしたが、なんとも憎めない下手くそな嘘でのやり取りをしている内に、少しだけ付き合ってやろうと考えた。
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