第559話

この日の夜、もう一泊することを決めたドモンは、数名の騎士と共にオーナーの部屋へ。

ナナ達も話を聞きたがっていたが、ここは頑なにお断り。

男のためのスケベな店を作るのに、女が首を突っ込んでは絶対に良いものが出来ないんだとドモンに真剣に強く説得され、渋々引き下がることになった。

ついでに奥さんと子供達もナナ達の部屋に行ってトランプ遊び。


騎士達がこの場にいるのは、新しく数軒の店を建てるため、カールに協力してもらおうと思ってのこと。

どのくらいの資材や予算、人件費がかかるのか、おおよその判断を下すため。


「・・・てな店もあるんだけど、ここでは他にはない、特別な店にしたいと思ってるんだよ」

「それ以上過激な店があるってんですかい?ボス」

「だからボスはやめろっての!で、こんな感じで・・・で放尿させて・・・んでもってペロペロと・・・」

「ぐ、ぐぅ・・!!」「なんと破廉恥な!」「おかしい!私にそのような性癖があるはずもないというのに何故?!」「ド、ドモン様・・・」「これをカルロス様に報告しろと?!」


テーブルに顔を突っ伏した数名の騎士達。今は絶対に股間を見られてはいけない。


「あとはホビットのところで経験したんだけどよ、下半身だけを穴の中に入れてゴニョゴニョ・・・あと自分だけじゃなく恋人や奥さんの下半身を床の穴に入れて、悶絶してる顔を見ながら酒を飲むという・・・」

「ボス!いくらなんでもそれはひでぇよ・・・」「悪魔だ・・・」「ぐはぁ!もう頭がおかしくなりそうだ!」「あ・・・」「ふぅ」


自分の奥さんが酷い目にあっていることをつい想像したオーナーと、ドモンの神経を疑う店長。

そして何故か数人覚めた顔になった騎士達。まるで賢者のよう。


スケベな店が大好きなドモンの話は尽きず、夕食を挟んで気がつけば深夜に。

その頃には騎士達ももう遠慮もせずに、手で股間を押さえながらイヒイヒと、ドモンの話を夢中で聞いていた。


「・・・でよ、おっパブってのがあって、酒の席で胸の大きな女が自分の上に跨って座って、胸を揉ませながらずっとチュッチュチュッチュと・・・」

「おぉ、それはボスとご一緒したいですな!」「あぁもう、私はまたアレが・・・」「さっさと手洗いでスッキリしてこい!あとがつかえてるんだぞ!」


スケベ話を肴に大量の酒を飲み、完全に出来上がった男達。

もう店のアイデアとか重要な話などはない。


「・・・そのケーキの女体盛りってのをされてた女の子が、ずっと裸で腹の上に冷たいクリーム乗せられていたもんだから、腹がすっかり冷えちまったんだろうな。男も女も大勢見守ってる中で、デカいオナラをしちまってよワッハッハ」

「イーッヒッヒッヒ!」「ガッハッハ」「女の子もオナラするんすね」「生き恥ですなそりゃカハハ」「スッキリついでに吐いてきまーすオェ」


横では数名の騎士達が床に並んで寝転がり『息子達の背比べ』なる謎の遊び。

ドモンから見れば、全員がダンクシュート出来そうなほど背が高い息子達。


「まあその女の子は、誕生日だから自ら女体盛りの土台にしてくれっていうくらい奇特な女の子だったので、恥ずかしがりながらも興奮していたよ。ナナにもやらせてみたいけど、あの胸じゃデカすぎて無理だろな。弾力もあるから食いもんが全部飛んじゃうよ」

「ボスの奥様の体はとんでもねぇですし」「あーナナ様の女体盛り見てぇ~!せめて裸だけでも」「おい!お前それは不敬だぞ!気持ちはわかるが・・・」「私は護衛の際に一度見たことがあるぞ。それはもう美しいなんてものではない。女神そのものだった」「私がどうかした?」


一瞬で凍りついた空気。全員一気に酔いも覚めた。そそくさと股間を隠す男達。

素知らぬ顔で「予算についてはそれで問題ないかと」と誤魔化した偉そうな騎士と、ウンウンと頷くオーナーと店長。


「いつまでかかってるの?サンもシンシアも部屋でずっと待ってるわよ。奥さんは先に部屋に戻っちゃったから、アイさんが子供達連れて隣の部屋行って一緒に寝ちゃったけどね。アイさんと出来なくて残念だったわねドモン」ドアの前には仁王立ちのナナ。

「今終わるところだよ。待たせて悪かったな。それに残念じゃないって別に・・・じゃあ行こうか。割れた窓は全部板で塞いでいるんだよな?」

「ええそれはもちろん。だから部屋も暖かいし覗かれる心配もないから、女体盛りでも何でも出来るわよ。オナラはしないけどね」

「そうかそうか、それは良かっ・・・え?」


ギリギリと鳴る歯ぎしり。青ざめる一同。

一体いつから聞かれていたのか?中の様子はバレていたのか?

入り口に立っていた見張りの騎士まで巻き込んで一緒に飲んでいたので、まったく誰も気が付かなかった。


「あんた達、田舎だからって随分羽根を伸ばしていたわね。見張りも立てないで、ドモンに何かあったらどうするつもりだったのよ?この事はカールさんにきっちり報告させてもらうからね!」捨て台詞を吐き、ドモンの腕を掴んで連行するナナ。現行犯逮捕である。

「お、奥様!それだけはご勘弁を!」「本当に!本当に私達の首が飛んでしまいます!」「お願いします許してください!なんでも・・・何でもしますから!」「あぁ御慈悲を」焦る騎士達。釣られるようにオーナーと店長も床に土下座。


「ん?今なんでもするって言ったわね?あんた達」

「は、はい・・・」「はい」「誓います」「おいナナ、いくらなんでもそれは・・・」

「ドモンは黙らっしゃい!!あんたはあんたで、あとで覚えてなさい!じゃああんた達、さっきのようにズボンと下着を脱いで、そこに四つん這いになって横に並びなさい!お尻はこっち向きね」

「そんなぁ」「おい貴様逆らうな!奥様の命令は絶対だ」「それも全て見てらっしゃったのですね・・・」


ドモンとナナの方に向かって四つん這いになり、お尻を突き出す男達。

たくさんの大きなナニかがブラブラと揺れるなんともおぞましい光景に、ナナはオホホと高笑い。


「あんた達は仕事もしないで!」「あうっ!」

「発情ばっかりして!」「ぐはぁ!」

「恥ずかしいと思わないの?!」「ごめんなさいぃぃぃ!!」


パーンパーンと激しい破裂音。

ドモンがお尻を叩かれている時の、数倍大きな音。


「あんたは叩かれる前になに漏らしてんのよ!」「ヒィィ!これは漏らしたのではありません・・・勝手に垂れて・・・・」

「お母さんに謝んなさい!ママ、生まれてきてごめんって!」「オォン!ママごめんなさい!!」


次々にお尻を叩かれる男達。

屈辱。だが逆らうことは出来ない。


「ヤダ!叱られてるのになに元気になってんの?!あんたもあんたもあんたもあんたも!このおっぱいが見たいわけ?ねぇ」

「うぅ・・・」「あ、あ、あ・・・」「おいナナやめとけって」


男達の顔の前に片膝をついて順番に顎を持ち上げ、目の前で大きな胸を揺らしたナナ。

騎士達を率いていた一番偉そうな騎士も、すっかり目の焦点も合わずヨダレを垂らす。


「気色の悪い牡豚どもがっ!全員アレを蹴っ飛ばしてやるから覚悟なさい!」「お、おい・・・」ナナの態度に焦るドモン。

「はい!」「お願いします!!」「終わるっ!人生終わっっちゃうぅぅ!」「だらしのない私めに罰をお与えください女王様ぁ!」

「うるさい!終わったら次は仰向けになりなさい!全員踏んづけてやるんだから!」


ぐはぁ!という断末魔と共に、何かで床を汚していった男達。

ただその男達の顔は満足気。ここにいた全員、金も命も生涯ナナに捧げる覚悟。

「踏むならせめて裸足でやってやってくれ」とドモンがナナに頼み込み、全員が無事、天に召された。


こうしてこの世界にも『SM倶楽部』『M性感』と呼ばれる風俗店が出来上がった。

どちらかと言えば男性が威厳を示すのが普通のこの世界では、あまりにも異例の店である。


その中でもナナが行った『女神の粛清コース』は大人気で、当然各国の貴族・王族御用達の繁盛店となった。



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