第一話 FXずんだもん始動
死にたい死にたい死にたい
将来のことを考えると不安で仕方なく無気力な生活を過ごす日々が続いた。
会社と家の往復。職場では変わらずふるまうが、家では家族と顔を合わせたくないがために電気もつけずに布団に潜り込んでいた。食事もまともに食べれない時期が続き、どんどん体重が落ちていった。給料を親にすべて渡し、必要なものは申告しなければいけない小学生のような生活は成人の精神をすり減らしていった。この生活をなんとかしなければいけない。何度も何度もお金を稼ぐ方法からこの苦しみから解放される方法を調べた。電車に乗るたびに飛び込んでしまいたい気持ちもあった。
そんな生活から抜け出す最短で唯一の方法はやはりFXしかなかった。だが、FXするためにお金がない。そこでFXするたびにお金が入るように動画投稿をしていこうと考えた。動画投稿にする理由は二つだった。一つは動画投稿で人気が出ればFX以上に安定した収入が入ること。そしてもう一つはFXの動画投稿で合成音声を使っている人が少なかったことだ。自分の声で喋るのは苦手でも合成音声なら自分で考えた文章を自由にしゃべらせることができる。その時期にちょうど無料の合成音声、ずんだもんが公開されていた。ずんだもんの動画は実況などに使われ、試しに使ってみると無料なのに高品質でとても使いやすかった。そしてFXずんだもんとして活動することにした。
最初の動画のネタはすぐに決まった。これから借金をしてFXするという内容だった。FXで稼いだ動画にできれば丸儲け、損をしても動画である程度取り返せればFXで取り返せるかもしれない。そんな理由から今度はレイクから借金五十万円することになる。レイクは初回六十日間利息無料だったので、安心してトレードできると思いネットで申し込んだ。オペレーターには会社に電話が行かないように頼み、審査は一時間から二時間ほどで終わり、すぐに銀行に振り込まれた。そしてFXずんだもんとして最初の勝負が始まる。
最初は手始めに一万円からトレードを始めた。一万円を百万円にできなければ百万円を一億円にできない。そんな思いから始めたチャレンジだったが、一万円を二万円にすることはすぐにできた。ゴールドをロングして放っておくだけで取れる相場だったのだ。この時はウクライナ情勢前ではあったものの、週足が下値切り上げのチャートで上への推進力が高まっていた。そして二万円まで増やした後はニュージーランド円をショートした。ニュージーランドの通貨、ニュージーランドドルは資源国通貨と言われ、物価高や原油高になるとそれらの通貨が買われやすくなる。そして資源国通貨はオーストラリアドルやカナダドルなどが主に含まれている。この時ショートした時は週足のレンジ下限付近で、抜ければある程度の下落が見込まれる位置だったが、反発してしまい、あえなくロスカットしてしまった。そして動画を作ることになるのだが、冷やかしのコメントから心配のコメント、今なら引き返せるなど様々な反響をいただいた。収益は入らないがとてもうれしかった。
FXのポジションを持つ基準となるのはテクニカル分析とファンダメンタルズ分析の両方があるが、テクニカル分析を心掛けている。今現在の環境認識を間違えなければ負ける人はいない。FXずんだもんが一番ポジションを持ちたい場面はレンジの下限、上限からの反発だ。ここで取ることができれば相当のリワードを得ることができるが、反対にレンジを破ってしまうと相当の損を被ることになる。そこでFXずんだもんがやっているのはロスカット戦略である。もしそのポジションすべてを失っても海外FX事業者なら大半がゼロ円未満にはなることがない。それ以下になった場合は補填してくれるのだ。なので今回の借金は資金を分散してエントリーしていた。確率論的には高くなるとは思うが、しっかり計画を立てて借金トレードをしたのはこれが最初で最後立ったのかもしれない。
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