第二話 誤算と勝算

 人の不幸は蜜の味なのだろうか。

 借金トレードを始める宣言をした最初の動画はあっという間に四千回の再生数がYouTube、ニコニコ動画ともに達成した。

 どちらも同じ再生回数というのは面白いが、それだけどちらのプラットフォームでも人気を博したのだろう。


 前回失った金額は一万円だが、まだ投入できる金額は五十万円あった。

 しかし、借金トレードの前に使ってはいけないお金、二十万円を使って溶かしていた。

 この二十万円は自分のお金ではなかった。そのために最低でも二十万円を稼がなければいけなかった。そのことを伏せたまま借金してFXをすると宣言したFXずんだもんは多少狡猾だったかもしれない。コメント返信を動画で行うことで視聴者のコメント意欲を引き立てるのも作戦の一つだった。ただ、情報を隠すことはあっても嘘をつくことは一度もなかったしこれからもしない。それが動画を見てくれる人への最大限のファンサービスである。


 動画の作戦とは裏腹にFXの作戦は少々ざっくりしたものかもしれない。まず最初に資金をすべて突っ込むのは絶対にやってはいけないと自分に言い聞かせていた。百パーセントがない世界で資金をすべて溶かしたら最初の借金の二の舞になってしまう。一度だけでなく二度失敗してしまうとやり直せなくなってしまうだろう。そうして一回の投入資金は五万円と決めた。さらっと書いたが借金トレード前の二十万円でのトレードは資金全部投入し溶かしてしまった。正確にはロスカット後に一万円ほど残高が残りそこから二十倍の二十万円まで戻した後ロスカット。そしてその後の残りカスではどうにもならなかった。

 五万円を二十倍にできればいくらかわかるだろう。そう、百万円なのだ。ここまではいかなくても最低限の二十万円に十分行く可能性を秘めたのが五万円だった。


 いつものトレード手法で反発したところを狙う作戦を実行する。仕事終わりに歩きながら携帯をみて良さそうなチャートを見つける。この頃から値動きの激しさで取りやすいゴールドを頻繁にトレードするようになった。ちょうどこの時、週足がほぼレンジで底上げだったので反発したところでロングを入れただけで勝てる相場だった。しかもウクライナ情勢前の時。そして二ロットを入れて含み益大体五万円に行き、安心してみていた。が気づいたら含み損になっていた。ここら辺は記憶があいまいだが、損切りをしたのかわからないが、最終的に往復五ロット以上の取引を達成してロスカットしていた。五ロットの取引が何を示すのか、ゲムフォレックスのユーザーならもうわかった人もいるのではないか。そう、最大千パーセントのボーナスがつくキャンペーンに応募できるのだ。

 FXずんだもんは口座残高二十五万円、使ってはいけないお金を戻したお金二十万円の合計四十五万円を最大使えるからまだ大丈夫と言い聞かせながら十万円を入金し、大きめの勝負に出る。

 誤算はロスカット。勝算はボーナス。運を味方に。お金を懐に。

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