着せ替えフェリシア 2

 目指すフロアにたどりつくと、マルガレーテが言っていた通り、そこには性別で区切らない、さまざまな服が売られていた。

 シンプルで落ち着いたデザインのものから、派手で奇抜なものまで、まさに多種多様。幅広いサイズ展開がなされ、フェリシアでもデートの服をコーディネートできそうだった。

 マルガレーテは何故か楽しそうにしながら、フェリシアに問うた。


「フェリシアお姉様は、どんなお召し物をご希望ですの?」


 そう聞かれて、フェリシアは戸惑う。ただ服が破けて手元にないから調達したいだけなのだ。


「ええっと……」


「というより、今お召しのワンピースが破ける前から新しいものをお求めにいらっしゃっていたんですわよね?」


「ええ、そうです。今まで着ていた私服が、すべてきつくなってしまっていて。……お恥ずかしながら、ずっと魔法師団の制服で過ごしていたから、気がつかなかったんです」


 魔法師団の制服は、少し余裕のある作りなのだ。


「わかりましたわ。私服がすべてきつくなってしまって、新調したいということですわね。もしかして、デート用ですの?」


「いいえ。ちょっとしたお出かけ用に」


 とっさにフェリシアはさらっと嘘をついた。本当は明日のミランとのデート用の服だ。だけど、言えない。なにせ、ミランはマルガレーテの元婚約者なのだから。


「……お姉様」


 マルガレーテは腰に手を当てたポーズでフェリシアを見上げた。


「お姉様と、わたくしの仲で、隠し事はなしですわ。本当のことを仰って下さいな。……デート、なのでしょう?」


「な、なんでそう思うんですか」


 フェリシアはたじろいだ。だめだ。マルガレーテの大きな目に見つめられると、その可愛さにくらくらして、動揺を隠せない。マルガレーテに魔力はないはずだが、まるで魔法にかかったようだ。


「お姉様は、以前お会いしたときより、とてもお美しくなりましたわ。そして、まろやかになりました。恋人がいらっしゃる証拠です」


 もちろん以前からもともとお綺麗でしたけれど、とマルガレーテは忘れず付け加えた。


「まろやか、ですか。はは、それは困りますね。ここだけの話、私は男性として活動しているのに」


 フェリシアはそう言って笑いながら、一歩、また一歩とあとずさった。マルガレーテの可憐なオーラに、このままで飲み込まれてしまいそうだ。


「何も困ることはありませんわ。今のお姉様ならデートのお相手もイチコロです。お姉様がお選びになった方ですから、きっと思慮深く、知的で大人な男性なのでしょうけど……」


 対してマルガレーテは見当違いなフェリシアの恋人を勝手に作り上げ、一歩一歩と前に進み、フェリシアに迫った。そして、フェリシアは試着室へと追い詰められてしまった。


「はっきり言います、フェリシアお姉様。お姉様の今日お召しのワンピース、流行遅れです。二年前流行ったデザインじゃないですか! わたくしが、今風らしく、コーディネートして差し上げますわ! さあさあ、色々試しましょう!」

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