第5話

そして30年の月日が流れた。

春人は毎年、玖美の墓参りに

行っていた。


[春人先生~こっちです。]

[はい、今行きます。]


[どうしました?]

[急に、お腹の辺りが痛み出して!]

[ちょっと見ますね?楽にして~]


そう春人は玖美との約束通り

医者に、なっていた。

最初の10年程は、大きな病院で

勤務をしていたが今は開業して

院長として患者さんを診ている。

どんな患者さんにも優しくて

親身になって診るので評判が

良く、病院が流行ると言うのは

困るが患者さんも、他の病院に

行くなら春人の病院でと、やって

来る。


[春人先生、もう良い年なのに

まだ結婚しないの?]

[しませんよ。]

[私、良い人を紹介しましょうか?]

[今日は診察に来たんでしょう?

結婚は、しないから心配しなくて

良いですから、自分を身体の

心配をして下さい。]

[は~勿体無いね!男前で優しくて

お医者さんで、いくらでも、お嫁に

来てくれるのにね~]

[本当だよね?]

と患者さん達は、何時も噂を

している。

ただ春人は一生、結婚しないと

決めていた。

それは決して変わらない。

診療時間が終わると外に出る春人。

病院の看板を見上げ呟く。

[玖美、好きだよ!]

看板には《くみ医院》と書かれて

いた。

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生きてる間、何度でも言うよ!好きだよ! aki @nyontyun

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