第2話
日曜日
手に何かを下げて春人がやって
来た。
[これ、家のお母さんがおばさんに
持って行く様にって、はい。]
[良いのに~ありがとう、はい
上がって、お母さんこれ春人の
お母さんから。]
[ごめんね春人君、お母さんに
気を遣わせちゃったね!]
[いいです、いいです。]
[はい、座って。]
[はい。]
[沢山、食べて!玖美は少ししか
食べないから!]
テーブルには沢山の料理が
並んでいた。
玖美の母の玖美を思う気持ちが
溢れていた。
[お父さん~ご飯ですよ。]
玖美のお父さんがやって来た。
[いらっしゃい、春人君。]
[すみません、今日はお邪魔して。]
[いやいや、食事は多い程
楽しいよ、なぁ?母さん?]
[本当ですね、さぁ食べましょう!]
[いただきます。]
[美味しい~おばさん美味しいです
なぁ?玖美。]
[うん、美味しい!]
[春人君、玖美は学校では、どう?]
[そうですね~家に居る時と一緒
ですよ。]
[迷惑掛けて無い?]
[あの~実は……]
[春人、言っちゃ駄目!]
と遮る玖美。
[何?玖美、春人君に何かしてるの?]
[いや、その~]
[毎日、僕に好きって何十回も
言うんですよ!]
[ハハハハ、玖美、そんなに
言ってるのか?]
[まぁ~]
[春人~]
真っ赤な顔の玖美。
だが父幹一も母良子も嬉しかった。
[ご馳走様でした。]
そう言って片付けを手伝う2人。
[いいよ、部屋に行って話でも
しなさい。]
[うん、これだけしたらね。]
[春人君、ありがとう。]
[いえ、こちらこそ!]
そして部屋で何気無い会話をする
2人。
[春人は大学卒業したら何に
なるの?]
[俺?俺は医者、医者を目指して
るんだ!玖美は?]
[私は看護士!]
[じゃあ将来、一緒の病院で
働くかもな?]
[そうだね!頑張らないと!
春人好きだよ!]
[その好きパワーを勉強に
向けろよ!]
[勉強は頑張ってますよ!
春人は?]
[俺も塾に行ったりしながら
ほぼ勉強だな!]
[でも何で、お医者さんに
なりたいの?]
[そうだな~やっぱり1人でも
苦しんでる人を助けたいって
言ったら、おこがましいんだけど
人の役に立ちたい!玖美は?]
[私は、お医者さんのサポートを
しながら患者さんのケア迄してる
看護士さんて凄いなって思って
それで目指してる!]
[それなら学校サボルなよ!]
[だから、家の用事だってば!]
(玖美、言わないな?)
[じゃあ、もう帰るわ!勉強だ!]
[うん、頑張ってね!春人好きだよ!]
[おじさん、おばさん、ご馳走様
でした!美味しかったです!
今日は帰ります!]
[あら?もう帰るの?]
[はい、勉強が有るんで!]
[そうか~頑張れよ!]
[はい。]
[又、何時でも来てね?]
[はい。]
[じゃあな!]
[じゃあね、春人好きだよ!]
[もう~コケルだろう!]
手を振って分かれる2人。
そんな、ある日
買い物帰りの玖美のお母さんと
用事で出ていた春人がバッタリ
会った。
[あっ、おばさん、この前は
ご馳走様でした!]
[今日は1人?]
[はい、玖美を送って用事が
有ったんで。]
[あら、そうなの?]
[あの~おばさん、一つ聞きたい
事が有るんですけど……]
[何?どうしたの?]
[何時も玖美が居るんで聞けなくて]
[何?]
[僕、玖美が学校休んで病院に
行ったの見たんです!どこか
悪いんですか?そうじゃなかったら
僕に嘘をついて迄、病院に行かない
でしょう?]
良子は顔から血の気が引くのが
分かった。
それを見て春人は何か有る事を
確信した。
[教えて下さい、おばさん!]
[春人君、それは玖美の口から
聞いた方が……]
[聞いても絶対に教えてくれませんよ
だから嘘をついて病院に行ってるん
ですよ!]
重い空気が流れる。
良子は思った。
(何時かは言わなくちゃ、いけない事
だから玖美、ごめんね、春人君に
言うね!)
[驚かないで聞いてね?春人君
玖美ね去年の冬に倒れて病院に
行ったの、その時に白血病って
診断されたの、だから定期的に
病院に通ってるの!]
[それで、この先玖美は
どうなるんですか!]
[骨髄移植が出来れば良いんだけど
玖美に適合するドナーの方がなかなか
見つからないの!何時まで生きて
居られるか、おばさんにも玖美にも
誰にも分からないの!]
[うせだ~うそだ~]
と泣き叫ぶ春人。
[だから玖美が春人君?毎日、何十回も
好きって言うのは自分が生きてる間に
沢山、言っておきたいからなんだと
思うよ!]
[玖美~]
[玖美も言えなくて辛かったと
思うよ!かばう訳じゃ無いけど
病気を知ったら春人君が居なく
なるんじゃ無いかと思って
恐がってたから!]
[……]
[春人君、春人君が決める事だから
良く考えて答えを出して!
玖美は私達が守るから!]
[……]
良子は、いたたまれず、その場を
去った。
動けない春人。
何時間、その場に居たのだろうか。
辺りは、すっかり日が落ちて
暗くなっていた。
家に帰った春人。
[春人~遅かったね~]
と春人の母瑠美が出て来た。
[春人、どうしたの、その顔?]
そう泣き叫んで、目が開けれない
位に腫れ上がっていた。
[何かで冷やす?]
[いい。]
と言って部屋に入る。
その頃玖美の家では良子が家に
帰って来た。
[お母さん、おかえり。]
玖美は母の顔を見て異変に気付いた。
[お母さん、何か有った?]
[ううん。]
[嘘、有ったでしょう?言って!]
良子は春人に会って問い詰められて
病気の事を話した事を伝えた。
その場に泣き崩れる玖美。
[ごめんね玖美、隠し通せなかった
んだよ、ごめんね。]
[ううん、何時かは言わないと
いけない事だったから。]
そう言って部屋に入ってしまった。
部屋で泣きながら考え込む
玖美と春人。
春人は
(どうにか玖美を助けれないのかな?
今の俺には何も出来ないよ!)
玖美は
(春人もう嫌になったかな?もう
好きも言えないのかな?寂しいな。)
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