第14話 移籍と周りの反応

 話は社長同士で滞りなく進んでいるらしく

 今週中には移籍完了になるそうだ。


 今まで所属していた社長は

 退社の届けもしっかりしてくれたし頑張れと応援もしてくれた。


「荷物はあそこの社長宛に送っておけばなんとかしてくれる。ファンレターも差し入れも忘れずに持っていくようにな」

「はい」

「あと、安藤に挨拶忘れるなよ。

 あれでしっかりとお前を気にかけていたんだからな」


(勝手に可愛がっていただけですよ)


 内面とは裏腹に波風立てないように返事をしておく。

「よぅ。移籍するんだってな。慣れたらかわいい子紹介してくれよな」


 挨拶したものの、やはり食えない先輩だった。


「はい。機会があればまた飲み会よんでくださいよ」

(もしかわいい子がいたとしてもぜっったいに紹介するもんか。

 もう接待とか諦めてふつーの女子と喋っててほしいもんだ)

 心に誓ってこの安藤先輩は避けて通ろうと思う。


 ☆☆☆

 翌日、大々的に移籍が報道された。

 当然SNSの反応は様々あるが、おおむね好意的なものだった。


『そんなのどこだっていいいじゃん』

『もっと演技に力を入れてほしい。活躍してほしい俳優さん』

『この前の役はまってた。別の事務所に行っても頑張って』


 話題の俳優ランキングにも入ってきたし、ファンも確実に増えていっている。


 無名の時やライバルがいたときのSNSの反応とは確実に違ってきていた。


(ありがたい。これからが頑張り時だな)


 今日から新しい事務所に所属開始日だ。


「今日からこちらにお世話になります佐々木です。よろしくお願いいたします」


「うむ。こちらの会社に移っても、頑張ってください」


 社長から直々に挨拶ときた。


 かなり期待されているようにも感じる。

 新事務所の壁には出演しているドラマのポスター。


「貢献できるように頑張ります」


「よろしくね」

 話しかけてきたのはその場にいる女性だ。

「マネージャーになりました西原です。よろしくね」


「いろいろ教えてやってくれ」

「かしこまりました。不祥事を起こさないようにみはればいいんですね」


「うむ。うちの事務所はスキャンダルは禁止だからな。

 きちんとそれ相応の俳優になってもらおう」


(確実にこの事務所は厳しい。気を付けないとクビだ)

 やはりピリリとした空気感が漂う。

「ところで、佐々木さんには次の大河の主演オファーが来ているんですが。

 どうされますか?」


「日程にかぶりがなければよろしくお願いいたします」


「わかりました。社長もよろしいですよね」


「もちろん。ガンガン仕事をしてきてくれ」


「はい」

 これから先の日常は忙しくなりそうだ。

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