第10話 事務所にて調べもの

 翌朝、事務所に向かった。

「憧れの人かぁ。そういう人がいれば面倒な女除けにはなるか。

 よく調べてみるか」


 事務所にあった多数の雑誌を眺めて考えてみることにする。


 例えば、『どんな子?』といわれた時に名前を出せる子であり、

 売名に使われなさそうな子でもあり、

 もしも共演してもあこがれの人と納得してもらえそうな女性。


「年上で、既婚で清楚系ならば……なんとか」

 女優さんで、もうすでに有名。

 そして、もしも共演しても笑い話にしてくれそうな――

 

 頭の中でぼんやりと考えていた理想に近い女性を

 雑誌であさる。


 時間をかけて探していたら、

 同じ俳優仲間の男性から声をかけられた。


「そんな雑誌の中に好みの子はいるか?」

「俺は顔はきれいな人がいいし、体は女性らしい人がいいんです」

「そんな女の子いるのかよ」


 俺は探していた手を止めて先輩たちに聞いてみた。

「うーん。理想はあるんですけど。

 なかなかこれっていう人がいなくって。

 皆さんの好みの女性ってどんな感じなんでしょ?」


「身体じゃない? あとは顔」


 典型的な回答が帰ってきた。

 辟易しながら、先輩を見ると意外な言葉が帰ってきた。


「フーン。じゃ、俺のおすすめの女優さん見るか?」

 先輩がページをめくって探している。

「おすすめって」

「ほら。いた。桜田ゆみさんならどうだ?」


 たしか、数年前に年上の俳優さんと結婚していたはず。

 桜田ゆみさんならかわいい系と綺麗系が両立している感じの女性だ。

 恋愛の話をかわすのに理想的だ。


「これ――ありです……」


「……佐々木って理想高いよな」


「確かにこれはなかなか」

「いいんですよ」


(これくらい高嶺の花の方がうっとおしい接待を受けなくて済むんで)

 裏の本音は所属が同じ俳優仲間であったとしても言えそうにない。


 所属仲間は特にスキャンダルにもならずに済んでいる。

 どんな隠す手段を持っているのか聞くのが怖いぐらいだ。


「ああ、そういえば神宮寺の謹慎、長くなるって」


「へぇ」


 ライバル復帰により仕事が半分に減る覚悟をしていたが、

 謹慎が伸びるなんてあるんだろうか?

「それ本当なのか?」


「ああ。ほかにも女がいたんだと。噂になった女性と、人気グラドルと一般人」

 週刊誌の見出しに、泥沼の三角関係と書かれている。

「三角関係だけで済めばいいが、それ以上になったら本当に復帰難しくなる」

「よかったな。仕事減らずに済みそうで」


「そういうこと言うのやめろよ。

 一応デビューは一緒だったんだし、

 できたら仕事復帰してほしいさ」


「難しいかもなぁ」

 週刊誌のみならず、テレビでも話題にされるようでは復帰は相当先になるだろう。


「テレビまで取り上げられるぐらいに人気だったとはね」


「あのルックスだからな。広告業界にはつかいやすかったんだろ」


「明日は我が身だろうな」


「気をつけろ」

 今のところもこれからも週刊誌に問題にされるようなことはないが、

 どこでどう作り話をされるのかわからない業界である。


 ある関係者の話とか言って面白おかしく脚色されてはたまらない。

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