第8話 ライバルとの差別化

 革に包まれたノートを準備する。

 あまり相手に見られたくないから手帳サイズだ。

 これもブランド物の革製品らしい。


(このままだと持ち物全部ブランドものになってしまいそうだな)


 時計とノートだけだが、

 大折なことを記録するには一周回ってアナログがいいらしい。


 女子ならシールを張ってかわいらしくデコレーションしてしまうところだが、

 そんな風には扱えないいのが男子のつらいところかもしれない。


(テンション上がらない……)


 転生したといっても考え方はまだまだ女性的なのである。

 そんな時期に事件は起きた。


 ライバル的な俳優が恋愛スキャンダルを起こしたらしい。

「今週の週刊誌に掲載されるらしいんだが、お前知っていたのか?」

「いいや。全然気が付かなかったよ」

「くっそ」

 社長はマスコミ各社の対応をするんだろう。

 一生懸命に電話をかけては怒鳴ったり謝ったりい忙しく働いている。


「お前の方はこういうことはないんだろうな」

「はい」

 社長はすごく気が立っている。

 俺は何もしてはいないのに。


 結局、デートしていた写真を撮られたということで謹慎らしい。

「芸能の世界って簡単に謹慎になるんだな」

 謹慎している間に若手芸能人がまた出てくるんだろう。

 

 今は欲望を抑えて売るときだろうに。


(まぁ、あれだけモテれば遊びたくもなるか)

 

 物腰が柔らかいせいか常に女性が近い距離にいたのだから。

 いつ問題になってもおかしくはなかった。


 本人たちがどれだけ本気なのかは周りには関係はない。

(俺たちの商品価値は清廉潔白でニコニコしていることなんだから。人間味を出したらおわりの商売なんだよな)

 これは過去の経験則から。

 応援してくれる人たちの偶像を壊すようなことをしては熱意が一気に敵意に代わる。前世で見てきた様子がよみがえりブルリと体を震わせる。


(それがこの業界の怖いトコロなんだよ)

 筋力や資格や学業などなど恋愛意外にもすることはたくさんある。


 ぶれずに、性欲に負けないことも売れるには必要な能力らしい。

(もう一回自分のことを見直すか)


 ライバルの不祥事により仕事の割合が変わってくるはずだ。

 それに対応できるかどうかでこれからの活動にも違いが出てくる。


(さっそくか)


 電話が鳴った。

 次の出演のオファーだ。

(代役ってのが複雑ではあるが、飲み込んで仕事をしないとな)

「はい大丈夫です」

「お前は不祥事を起こさないようにしてくれ」

「心得ていますよ」

 流石に同世代で似ているとなると心配はされるが、

 今までの実績からとりあえず仕事をとることには成功する。


「さぁ、これからが実力で上がっていくぞ」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る