第3話有名のなり方
「履歴書送ればいいのか?」
「そうらしい」
まさか、そんな簡単なことでなれるものだろうか。
女子時代はスカウトが勝手にきたから
なり方なんて考えたことなかった。
ふつうはそういうルートすらよくわからないものなんだな。
前世の自分は恵まれていたということか。
感謝しながら、もし実現したらどうしようかと考えてしまう。
☆☆☆
学校が終わって、自宅で漫画を読んでいるところ。
(履歴書を書いて送ったところで、そんなに受かるものでもないだろ)
楽観的に考えていたら、スマホに連絡があった。
RRRRR
「×会社の〇〇ともうします。
俳優養成所の件で履歴書を送っていただいたと思うのですが」
「確かにおくらせていただきましたが、何か不備がございましたでしょうか?」
「社長が佐々木様とお会いしたいと申しておりまして」
「え?」
「ええ。いきなりで驚かれたかと思いますが、ぜひご検討していただきたく」
「ええ。場所はどこに」
「新宿まで来れますでしょうか」
「大丈夫です、お時間はどうですか?」
「17時ごろはいかがでしょう」
「いきます」
スムーズに連絡も来た。
17時の新宿に俺は向かった。
「スーツで行くとかしこまる必要はなかったのに」
偉い人はそういった。どこまで偉い人なのかはわからない。
「では、このセリフ、読んで」
「はい」
なるべく感情をこめて、でも過剰な演出になりすぎないように。
リアリティある。芝居になるように心がける。
大げさになりすぎない。
でも無の感情でもない。
求まられるちょうどいい演技。
前世の記憶の引き出しを使う。
(あの時の男の先輩は自然にこなしていた。
私もそれをまじかで見てきた時期がある。落ち着いてすれば大丈夫)
「すごいね、伸びる余地も売れる可能性もあるよ」
「本当ですか」
「君、ルックスもいいし、話題になりそうだよ。所属しないか」
「はい。お願いします」
(きっとこの所属の話、私だけなんだろうな)
誘ってくれた友達は何もないのだろう。
ルックスがいいというのは得があるのは確かだ。
現実はただただ残酷であったりもする。
(これで、友人関係気まずくならないといいな。
あいつ、本気じゃない感じだったけれどどうかな)
翌日、学校でそれとなくはなしを振ってみる。
「智樹、あれから、事務所から連絡きた?」
「いや、来てないよ」
「そう。俺なんか連絡きて、面接いってきた」
「そうなんだ。すごいな」
完璧な棒読みである。
(嫉妬しなかったらいいな)
男の嫉妬はえぐいと前世で聞いたことがある。
友人の反応が怖かったが、いつもと変わらない態度だと思えた。
☆☆☆
改めて会おうといわれて、今ファミレスにいる。
周りを気にして小声になる。
「連絡来たってホント? マジのマジ?」
「ああ。台詞読んで、所属してって言われた感じかな」
「さっすがに容姿整っているもんなぁ」
「それは言わないでほしい」
「これからもっと言われるんだぜ」
「確かにそうかも。慣れないもんだな」
「応援しているから」
「ありがとう」
いい友人を持ったようだ。
筋力もそれなりについているからメディア露出も多くなるかもしれない。
「休むこともあるかもしれない。ノートとか見せてくれよな」
「ああ」
安心した。なるべくより良い関係でいたいものだ。
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