女子シングル選手(1)~伶里、弓香~

鷺沢伶里さぎさわれいり(日本)

SOEにのみ登場するSOE主人公。

正確には、SHで環がリアムの前でコンテンポラリーを踊る際に名を出さず間接的に存在が言及されるシーンがある。

トリノシーズン時点で25歳。作中では16歳と17歳、数年後の20歳から25歳までの姿が語られる。

東京都郊外の栗橋市の生まれ育ちで、7歳で親がカルガリー五輪を見たことでスケートを始めさせられる。

浅井廉士に見込まれてコーチングを受け、技術は高いレベルに達するが芸術性の低さなどからジュニア時代は結果が出せなかった。

シニアデビューした高1のシーズンに、同い年のロシアの神童イリヤ・バシキロフの演技に感動したことで躍進するが、体形変化やメンタルの不安定さからその後も浮き沈みが激しい状態が続く。

恋人で選手の加藤雅之への同情から、五輪挑戦2度目のチャンスとなるソルトレイクを放棄してしまい、しかしテレビで大会の模様を見て激しい後悔にかられ、トリノを目指すことを決意する。

しかしジャンプ能力のピークを過ぎた上に裕福ではない家庭環境のために苦労は今まで以上のものとなった。

そのため親に対する悔恨の念に始終苛まれることになり、一方で献身的に支えてくれともに困難を乗り越えてきたコーチの廉士への恋愛感情も芽生えるようになる。

それらのことにより、トリノへの出場権をつかんだころにはかつてのモチベーションだったバシキロフについては「どうでもいい存在」と内心突き放すまでになっていたが、トリノの女子ショートで2位になり選手村で今まで実際に会っていなかったバシキロフと遭遇し、かつてないときめきを覚える。

女子フリーで見事な演技を披露して銀メダルを獲得した後、エキシでバシキロフと一夜限りのカップル演技を披露し、氷神と呼ばれた男の神秘性の秘密を悟る。


性格はぼんやりとしていると言われ、実際に涙もろくプレッシャーに弱いと自他ともに認めるほどであるが、何かのスイッチが入ると非常に熱意のある言動に出たり、大の男をたじろがせるほど刺々しかったり威厳のある態度をみせることもある。

スケートをやりこみながら中堅都立高に進学し英会話も堪能であるなど、学業は優秀。

手先が器用という一面もあり料理や裁縫も得意だが、音感や芸術的感性に欠けるために音楽や絵を描くことは苦手。

技術は若いころから非常に高く、ジャンプはトリプルアクセルや四回転は跳べないものの5種類のトリプルとフリップ・ループの3+3を跳び、後には3+3+3を成功させてギネスブックにのるなど世界トップレベル。

もっともフリップの名手であるためにルッツはややフルッツ気味である。

ジャンプ以外の技の精度も高く、基礎技術がしっかりしているうえに柔軟性があるため新採点でレベル獲得に必要な複雑なポジションがとれ、複雑なステップシークエンスもこなせる。

また十代のころから焦らず身体つくりをし、ジャンプセンスが高く身体を正しく使えているために長身にもかかわらず大きな故障にも無縁。

さらに二十代になっても余裕のある演技を可能とする豊富な体力を誇る。

しかし彼女の真の強みは基礎のスケーティングにある。

運動神経はアスリートレベルとしては平凡であるものの「通常の床の上では落ち着かない」という独特な身体感覚を持ち、それが世界からの疎外感にもつながり幼少期の独特な無愛想な態度となってきた。

だがそれは実は「足にスケート靴のブレードをはやして生まれてきた」というほどの天性のスケーターとしての素質の表れであった。

これほどの天分と技術を持ちながらもメンタルと芸術性に欠けるために、2001年度世界選手権で銀メダルを獲得した以外は栄冠とは縁遠かった。

しかしソルトレイクを逃した次のシーズンからは徐々に表現力と精神力ともに成長し、トリノ五輪女子フリーでそれは銀メダル以外に一つの成果を生み、バシキロフから「今大会の真のチャンピオン」との言葉を引き出す。

スケーターズ世界の中で「太陽」になぞらえられた唯一の女子。




九條弓香くじょうゆみか(日本)

SOEにのみ登場。伶里の一学年上で、長野以前からソルトレイクシーズンまでの日本女子シングルのエース。

高1で全日本4位に入賞したのをかわぎりに全日本表彰台の常連となり、伶里とトップを争う。

小5でトリプルジャンプを修得するなど優れた素質を持つが、ループジャンプが苦手な上に3+3が跳べないために世界トップレベルには隔たりがある。

長野五輪は片田菜穂子に敗れて出場を逃し、その次の五輪までに四大陸3位などの好成績を上げるが足首の故障で01年度世界選手権は欠場。

ソルトレイクシーズンでも股関節の故障に苦しみ、五輪6位に入賞するも直後に引退、ショースケーターの夢もあきらめ振付師を目指すなど苦労の多い競技人生となる。


資産家令嬢で天然パーマの茶色がかった髪と目の美女。

高校生のころから高級感のあるファッションを好み、そのような生活が試合の演技にも反映し、華麗な表現を生むと伶里に評される。

性格は非常に勝気で潔癖、曲がったことは大嫌いだが、長野シーズンに片田菜穂子の伶里へのメンタル攻撃を目の当たりにしながらライバルが減る有利に傾き放置してしまう。

また伶里の圧倒的な素質に対する畏怖と現実に追い抜かれる恐怖、自身の才能不足による劣等感にも常に苦しめられているがそれを表に出すことはなく、毅然とした女王としてのふるまい崩さない。

浅井廉士には一時期本気で恋愛感情を抱いて告白するも断られ、その後はきわめて微妙な距離感を保つことになる。

上述のように引退後は振付師の道を歩み、トリノシーズンにはかつてのライバルである伶里の振付を担当する。

華やかで見栄えがして新採点にもよく対応し、伶里の能力を存分に引き出すプログラムを完成させ、伶里をトリノ五輪銀メダルに導く。

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