第2話 銀騎士ヘイロンvs魔導元帥ベルパイア

 暗闇を照らすが故に、光だろうよ。


 曖昧が好きか、亡者。

 何もないことの証明が怖いか。


 お前が憎い。


 故に、お前は邪魔だ。


1.死界-霊廟


 この世界は魑魅魍魎が跋扈する地獄。


 特に多いのがヒルだ。血を啜って生きている。この世界には血がよく落ちる。


 コイン。

 それは死者の魂。

 皆がそれを奪い合う。

 奪い合うのを躊躇えば、後ろから刺されるが故に。


「…また、敵か。」


 銀騎士ヘイロンはため息をついた。


「───俺のセリフだ。」


 物陰より現れたのは、魔導元帥ベルパイア。

 300年生きたとされる、生きる魔法図書館だ。


「その風貌、魔導元帥ベルパイアと見るが、いかに。」


 銀騎士は問いかける。


「いかにも。」


 魔導元帥は答えた。

 銀騎士は兼ねてからの疑問を言った。


「何故我らは戦うのだ。」


 魔導元帥は、笑う。


「なんだ、そんなことか。」

「集合するためだ。我らの魂を一つにするためだ。」


 銀騎士は眉間を顰めた。


「なんになるというのだ。」


 魔導元帥は掌を銀騎士へ向けた。


「わからぬが故に。」

「ここより先が、わからぬが故に。」


「───【炎髄髑髏】。」


 魔導元帥の身体が炎の鎧に包まれる。

 あらゆる銃弾も、あらゆる鎧も溶かす、熱の城。

 この死界において、彼は最も多くの戦士に有利を取れる亡者であった。


「相手が悪かったな元帥。」


 銀騎士は腰の光線銃を抜き、魔導元帥へ向けて引き金を引いた。

 一筋の熱戦が熱の城を貫通する。


 万全の状態の魔導元帥ならば、彼が操る多数の結界術で熱線など容易く止めることができる。


 だが、時間がなかった。

 言葉一つ紡ぐのと、光が透過するの二つであれば、光のほうが速いことは当然至極故。


 魔導元帥の頭部は溶けた。


 炎の鎧が消える。

 コインが落ちる音がした。


 魔導元帥、ベルパイアは死んだ。


 銀騎士はまたしても、コインを天へ掲げる。


「───【リリース】。」


 ヘイロンの身体が、天上からの光で照らされる。


「…そうか。」


「わからぬが…私が勝ち抜くべきなのだ。」


 銀騎士は2度目にて理解した。

 【リリース】なる行為の意味を。

 この身体に神より埋め込まれた浄罪のやり方を。


 銀騎士の身体に、タトゥーが走っていた。

 銀騎士は魔道の力を扱えるようになった。

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バトルオブカオス 松田勝平 @abcert

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