魔法少女4


「一緒に帰ろう~」

「うん、帰るどこか寄っていく?」


「なあ、聞いたか? 部長が二年の」

「えー、マジで付き合ってんの?」


ある日の放課後。午後の授業が終わり、クラスメイト達がこれからどうする? と仲良さそうに話している。


陰キャな私は相変わらず一人で放課後を過ごすことになった。


「……帰ろう」


小さい頃は日曜日の朝の変身アニメの主人公みたいな、クラスメイト達に囲まれるクラスの中心人物的な女の子になれると信じていたけれど。

現実はコレだ。


「あー、もー」



叫びたいの必死に堪えながら、私は廊下を歩いていく。


連日連夜、ドリーム・ドレインとの戦い。学校では今まで通り、ボッチ。


「こう、もうちょっとなんと言うか。陽キャのように過ごせないかなぁ」

『もっとクラスメイトに話しかければいいのでは?』


姿を消しているマスコット的な感じでウサギの姿になっているナナがテレパシーでわたしに話しかけてきた。


『無茶言わないでよ。それが出来たら陰キャになってない』

『でも、話しかけないと陽キャになれないのでは?』

『私の知らない話題しか話さない連中とどうやって話をしろと?』

『他人と仲良くしたいなら、最初は自分が他人に合わせないと、みんなが見ているドラマとかカラオケとか』


「……無理」


見ていてもクソつまらねぇ、ドラマを見て何の価値があるの? って思ってしまう。

アクションシーンも何と言うか、やらせっぽいし。爆破も昔のようなド派手な。本物の爆発じゃないし。


「合わせるかぁ」


一応、オタク趣味の女子生徒に話しかけようとしたけれど。

ジャンルが違い過ぎて話しかけるのを止めたんだよね。


私は男性向けのゲームが好きだから、腐女子や乙女ゲーは趣味の範囲外だし。

もしかして、私一生友達出来ないのかな?


そんなことを思わず考えてしまう私。


『その、チャンスがあったらとりあず、話かけてみたら?』

『前にそれをやって、何コイツ? みたいな顔をされたから』

『そう……』


「早く家に帰ろう」


私はそう呟いて、家に帰ることにした。

うぅ、周りのリア充達を見て、テンションが下がっちゃった。

家に帰ったら自室で、神アニメをいくつか見て、テンションを上げないと。


そう思っていたけれど。


『輝』

『え、敵?』

『ええ、そのようね。急いで』


しょうがないなぁ。こういう気分が乗らない時に来ないでほしいのに。


そう思いながら、私はナナのナビゲートに従い、ドリーム・ドレインが現れた場所へと移動した。





「嘘でしょう」


私は公園の入り口近くにある自販機の陰に隠れながら、思わず目の前にいるドリーム・ドレインから顔をそむけた。


『最悪ね、アレは人に寄生するタイプのドリーム・ドレインよ』


やや人気のない公園に辿り着くとそこにいたのは、私と同じ学校の女子生徒だ。

しかし、その姿はの上半身はグロテスクな肉の塊のようなモノが付着していた。


「ど、どうすればいい?!」

『待って、今結界を張るわ! よし、ダイヤ変身よ!』


ナナの声に頷いて、即座に変身をする。


アニメなら変身シーンがあるだろうけれど、私の変身にそんなものはない。

瞬きよりも早く変身して、魔法少女ダイヤ(仮)となった私はナナと作戦会議を行う。


「あ、アレはどうやって倒せばいいの」

『一応、いくつか方法はあるけれど、今のダイヤに出来る方法はまず、奴を弱らせて』

「了解、あの手の敵はどんな攻撃をしてくるの?」

『攻撃方法は寄生した人間の体を使った肉弾戦。でも、規制している人間が死んだり動けなくなると、タコのように身体を広げて襲い掛かって来るから気を付けてね』

「分かった。それとどんな攻撃が有効?」

『規制されている女子生徒も助けたいなら、そうね。電気よ』

「電気?」

『ええ、火だと女子生徒に大やけどを負わせてしまうわ。それと氷はダイヤはまだ練習中だし。貴女が使える魔法で素早く、女子生徒に寄生しているドリーム・ドレインを引き離すんだ』

「分かったやってみる」


私は杖を自身のジェムー。ゲームなどで魔力とか言われる力を使って、生み出した。

そして、そのまま自販機の影から身体を出さないようにしながら。


「ライトニング (小声)」

「ギャアアアアアアア!!!!!」



と小声で魔法を使った。別に無言で魔法も使えるけれど、まだ私の魔法の明確なイメージが弱いせいか。

無言で魔法を使うとあまり威力は強くない。


「ライトニング、ライトニング、ライトニング、ライトニング、ライトニング、ライトニング」

『いいぞ、ダイヤ! 寄生されている女子生徒へのダメージは最小限だ』


丁度いい感じに上半身にドリーム・ドレインが女子生徒の寄生しているおかげで、結果的に女子生徒への防具のようになっている。


「もう一つオマケにライトニング!」


最後のライトニングをトドメとして、女子生徒に寄生していたドリーム・ドレインは完全に消滅した。

今日も魔法少女ダイヤの戦闘はおわった。


『ダイヤ、さっそく治療と記憶の処理をしましょう』

「うん、分かった」


記憶の処理、魔法少女のことを覚えられていて、ネットにでも拡散されたら困るので、迅速に記憶の処理を行うことにしている。

私は公園の中心で糸の切れた人形のように倒れている女子生徒の様子をうかがう。

うん、気を失っていそう。それにライトニングのダメージも思ったよりもないみたい。

上半身に寄生していたドリーム・ドレインを集中的に攻撃したからかな?


『もう少し彼女に近づいてください。ダイヤ』

「分かった」


倒れている女子生徒に近づいて、私はその顔を見た時に見覚えがあった。


「あれ? この子って確か」

『知り合いですか?』

「ううん、ただ顔と名前だけは知っている。と言うか、ナナもテレビで見たことない?」

『この子を?』

「隣のクラスのおっとり系の美少女中学生アイドルの海原リンよ。私とは違う本当の陽キャ」

『ああ、確かにそうですね。前に学校にアイドルが居るとは聞いていましたが、この子でしたか。五人くらいのアイドルグループでしたか?」

「そうそう、うん。その中の中学生だけれど、他のグループよりも存在感というか」

『おっぱいが大きくて包容力のある生徒だね』

「言わないようにしていたのに!」


海原リン。今もアイドルをしているけれど。

彼氏がいる疑惑が原因で、昔よりも活動を縮小している。

もう、アイドルは止めるとかって聞いていたけれど。


「さて、じゃあ。ナナ治癒魔法と記憶の処理の魔法を」

『分かったわ』


ナナの身体に力が溢れ出す少し前に、倒れていた海原リンが目を覚まして突然、私に抱き着いてきた。


「待って! お願いだから記憶を消さないで!」


私の顔面にとても中学生とは思えないほどの大きい物が押し付けられて、私は思わず窒息しそうになる。


「本当にお願い! 何でもするから許して! 記憶が消えたら、困るの」


突然のことに驚きながらも、私は彼女を私は引っぺがして、ナナに魔法を使うように頼んだ。


『もとより、そのつもりだ。今はまだ魔法の存在を知られない方が良いからね』


こうして、ナナの魔法は海原リンにかけられた。

魔法を掛けられた瞬間、海原リンは直ぐに気を失った。


私は突然抱きしめられてドキドキしながらも、彼女を背負って、魔法で彼女と共に姿を消して。


そのままやっと慣れてきた飛行魔法で海原リンをマンションの家の扉の前に座らせる。

学生証を海原リンが持っていてよかった。


別れ際に驚かされたちょっとした仕返しもかねて、海原リンを起こすために威力をすごーく小さくしたライトニングを当ててから帰った。


「ふぅ、これで良し。さ、帰ろうか」

『はい。と言いたいところですが。どうやら、まだ敵は居るみたいですよ」

「もう、分かったわ。倒しに行きましょう」


今日もこうやって、私は魔法少女として活動をする。

大変だし、もう嫌だって思う時もあるけれど。


「うん、今日は人助けになってよかったかな」


そう思わないとやっていられないと言うところもあるけれど。


「さぁ、変身よ。輝」

「分かったわ」



人を襲い。ロープのようなもので、人を拘束して、手をかざしてドリーム・ジェムーを奪い取る、ドリームドレイン。


「さっきは魔法で倒した。今回は敵が人型だから、後ろから首を両断しようとおもうけれど?」

「敵が人型でも、首を切り落とせば終わりではない敵も居ます。狙撃しましょう」

「分かったわ」


人々の平和の為に、魔法少女として頑張ろうっと!





海原リンは自室で今日、自身に起こった出来事を改めて思い出す。


「……魔法少女が本当に存在するなんて」


この日、幸運を海原リンは手にしていた。


ドリーム・ドレインの知的生命体に寄生するタイプに襲われ、寄生されたこと。


自分自身へダメージを抑えられる状態で、何度も魔法少女ダイヤの骨に響くライトニングをドリームドレインが結果的に盾となった状態でライトニングの連発を食らい、その刺激が海原リンの隠れた魔力を目覚めさせた。


更にドリーム・ドレインに襲われ、何度もライトニングを受けたことにより。

彼女は無意識に特殊な守りの魔法を目覚め。

海原リンは無意識この魔法を使い、ナナの記憶操作の魔法を無効化に成功した。


「あの声はそう、確か綺羅輝さん。前に一度、独り言を言っていたのを覚えているわ」


好きな声優の声質とは違う。どこか引き寄せられるような。声質だったので海原リンは覚えていた。


「アイドルを辞めたあと、どうしたらと思っていたけど。これから、凄く楽しみね」


海原リンは楽しげに笑いながら、これからのことを想像して、笑みを浮かべた。

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