魔法少女3


「魔法少女ですか、相変わらずですね。武先輩」

「いや、俺が何かをしたわけではないからな」

「本当ですか~」



放課後、今日は麻山が時間があったので一緒に過ごすことにして、麻山と共に俺は自宅に帰った。

リビングでのんびり二人でコンビニで買ってきた数種類の秋の新作のデザートを半分に分け合いながら、味の感想を言い合っている時にふと思い出して、魔法少女のことを麻山に教えた。


「本当だ。どうやら、本当にこの世界の物ではない、魔法少女らしい」

「所謂、異世界から来たってヤツですか? 日朝のアニメみたいですね」

「ミノが近くにいるから、大丈夫だとは思うが。イオンちゃんは巫女の資質がある。一応、気にかけてやってくれ」

「分かりました。シャナちゃんの方は?」

「そっちも連絡済みだから、問題はない」


巫女の資質があるイオンちゃんと元生物兵器のベースとして利用されたシャナ。

この二人は色々とそういうモノを引き寄せる可能性がある。

二人には監視兼護衛を付けてはいるから問題はない。


「麻山も魔力は無いから、問題ないだろう」

「それはそれで、悲しいですよ。武先輩」

「まあ、魔道具の使い方を覚えて、疑似的に魔法を使って満足してもらうしかないかな」

「それ我に返った時に虚しくなるヤツじゃないですか?」

「え、何か覚えがあるのか?」

「ありません!」


ふむ、重度な中二病ではないが、軽度な中二病にかかったことがあるのかな?

深くは触れないでおこう。

……今の俺って、リアルな中二病な気がしてきたけど。うん、忘れよう。


「でも、魔法少女って。良いですよね、小さい頃に一度はごっご遊びはしますよね」

「ああ、俺も小学生一二年生くらいまでは、普通に遊んでいたはずだ」


勇者としての活動も合わせるとかなりの時間が過ぎているから、うっすらとしか覚えていないが。


「魔法少女かぁ、いいな。憧れますね」

「そういう魔法道具があるから、変身してみるか?」

「え、良いんですか!?」

「お、おう」


魔法が使えないから、最近麻山は魔法道具に夢中になている。

最近、学校では麻山と接することが出来たが、中々放課後は一緒に居る時間がなかったから、今日は麻山とゆっくり過ごそう。


「じゃあ、やってみるか。あ、それとどんな衣装の魔法少女が良い? 俺の仲間が色々と作っていたから、デザインも結構豊富だぞ」

「へー! それは楽しみですね」


三十秒後、俺が適当にいくつか取り出した変身できる魔法道具の中から、麻山はピンポイントで際どい魔法少女の衣装の魔道具を引き当てて、変身した後に可愛らしい悲鳴を上げることになった。






「よし、勝った」


可愛らしいフリル付きのドレス姿の少女となった。綺羅輝は手にしていた魔法の杖を消して周囲を確認する。


「そろそろ家に帰ろうか」

「そうね。今夜ももう遅いし」


輝の左肩に乗っている小さな白いウサギのナナも頷く。

ここ最近、ドリーム・ドレインの偵察が徐々に増えていて、日中だけではなく夜にも輝はドリーム・ドレインと戦っている。


「時々、手強い敵も増えてきたね」

「今後のことを考えると、そろそろ侵略する為に戦闘用の人員が送られてくるはず。それまでに新しい仲間が欲しかったけれど」

「やっぱり、誰も居ない?」

「ええ、私以外にこの地球に辿り着いたドリーム・ジェムーは存在しないのかもしれないわ」

「私一人で七人も強い敵と戦うしかないの?」

「落ち着いて、私達の世界は初めから戦士の数が多かったから、最初から大勢の敵が送り込まれてきたけれど。この世界に魔法は無いみたいだし、恐らく侵略部隊は少ない筈よ。最初のうちは」

「最初のうち、ってことは少しは時間がある?」

「ええ、これは奴等と戦った戦士達が手に入れた情報だけど、奴等は本来は複数の世界を同時に侵略しているらしいの」

「ナナの世界は戦士が多いから一気に攻撃されたってこと」

「そうよ。この世界には私達の世界ようにジェムー。ダイヤの世界で言う魔法が無いわ」


魔法が無い。だから、ドリーム・ドレインからしてみれば、重要ではないってことね。と納得する輝。


「これからも、こちらの情報を持ち帰られる前に、普段は私が敵を探して。ダイヤが確実に倒しましょう。ダイヤも奇襲が上手くなってきているからな」

「魔法少女としてはどうなのかなって思うけれど。そうね、確実に倒していきましょう」


ここ最近の輝は戦いに慣れてきていた。

魔法少女らしくは無いが、狙撃や背後からの一撃などに慣れてきた。

正面からの戦いにも少しずつ慣れていっている。


だからこそ、輝達は油断していた。

彼女達は偵察として地球に侵入してきた敵とは別に、侵入したドリーム・ドレインを囮として地球の戦力を測るための監視が送り込まれていることに気付いていなかった。


輝が最初に遭遇したドリーム・ドレインが倒された時点で、輝達の情報は既にドリーム・ドレインに知られていたのだった。


「よーし、それなら限られた時間内で頑張らないとね」

「ええ、鍛錬もより実践的に行きましょう」


そして、二人を監視しているのはドリーム・ドレインだけではなかった。





――縁眼家 地下の儀式の間



「はぁ~、まいりましたね」

「お嬢様?」

「いえ、武様が動かないようにする為に必要な事とはいえ、確実に面倒なことになりましたね」


縁眼小夜子は魔法少女が現れて直ぐに日本政府の要請で魔法少女の監視をしていた。

そして、異世界からやって来たドリーム・ドレインが仲間を餌にして、魔法少女達を監視しているのも分かっていた。


「マニュアル通りに進める予定ですが、上手くいくと良いのですが」

「そうですね。人間以外が介入してこなければよいのですが」


魔法と言う存在を世界全体で隠している。

そして、時には世界全体に魔法の存在が露見しそうになったことは数回ある。

それを防いできたのが大規模な隠蔽魔法。


アメリカは何故か、ヒーローのような存在が現れる。

それ故に過去に数回大規模な隠蔽魔法を使用したことがあり、隠蔽に成功している。


日本の場合も過去に大妖怪と呼ぶ存在が日本全国で暴れていたが、神話やお伽話。都市伝説として人々の認知させた。


「武様が動くようなことになれば、何が起こるか分かりません」


敵の主力は近々やってくるだろう。

読唇術でドリーム・ジェムーなる物が魔法少女になる為に必要なアイテムだと言うのも分かっている。

日本政府は現在ドリーム・ジェムーを全力で捜索。

発見次第、日本政府は偶然を装い、ドリーム・ジェムーを誘導し、魔法少女の数を増やした上でドリーム・ドレインを倒させる。


日本政府は、異世界から来た侵略者の隠蔽作業に全力を尽くす。


それがこの時の全世界の政府と魔法関係者の目標だった。


「本当に上手くいくと良いのですが」


縁眼小夜子は自分の想い人がいる日本で厄介ごとが起こってしまった以上は必ず、大事になるだろう。


この時、彼女は既に色々と覚悟していた。

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